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不倫がバレたら「前と同じ」になんて絶対なれないんだ/『あなたのことはそれほど』第八話レビュー

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あなたのことはそれほど

『あなたのことはそれほど』公式サイトより

回を追うごとにどんどん視聴者が盛り上がっている連続ドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS)。視聴率で見ると、初回の11.1%以降は五話まで9%台キープでしたが、六話で11.5%、七話で12.4%、そして6月6日放送の八話は13.5%を記録と後半の追い上げがすごい。TBS火曜22時枠ドラマ班、快進撃を続けている印象です(数字はすべてビデオリサーチ調べ、関東地区)。

予定では全十話なので残り二話。原作マンガも完結しておらず、ドラマオリジナルキャラ(山崎育三郎が演じる涼太の親友・小田原)の暗躍もあって、どう幕引きするつもりなのかまったく読めません。原作と違って有島くんがそこそこ美都に恋愛感情を持ってそうだったり(立派なホテルでランチして部屋までとりましたからね、出産祝金で。有島がカネを使った! って驚きました)、美都と母親がそれほど不仲じゃなかったりもするので、残り二話の展開はどう転んでもおかしくないでしょう。というわけで第八話のプレイバック! 今週も育三郎は活躍していました!

<登場人物>

■渡辺美都(わたなべ・みつ)/波瑠
旧姓・三好。スナックママの一人娘、母子家庭育ち。地元は横浜。眼科の医療事務として働く女性。小学校時代に転入してきて中学で転校してしまった有島くんに初恋をし、大人になった今もその恋心を保管し続けて再会即不倫。優しく料理上手な涼太にアプローチされて結婚したが夫のことは「二番目に好きな人」だと思っていた。

■渡辺涼太(わたなべ・りょうた)/東出昌大
インテリア関係の会社の総務部で働く。眼科で美都に一目惚れして求婚。愛妻家で料理上手で洗濯や掃除も得意。朗らかで愛情深く、見知らぬ他人にも親切で、妻の母親ともうまくやっている。妻がもはや自分を愛していないと知りながら超執着。

■有島光軌(ありしま・こうき)/鈴木伸之(劇団EXILE)
サラリーマン。親が転勤族で横浜→所沢に引越し。美都とは横浜時代のクラスメイトだった。所沢の高校の同級生だった麗華と結婚し、一児の父に。学生時代からイケメンで女に不自由しないタイプ。公式紹介によると「基本的には家庭第一なのだが、根が優しく流されやすい性格のため、泣きつかれると弱い」。

■有島麗華(ありしま・れいか)/仲里依紗
旧姓・戸川。高校の同級生だった有島と結婚し妊娠、所沢の実家で里帰り出産。今は自宅でほぼワンオペ子育て中、それを苦に思ってはいない。

【第一話】再現VTRみたい…アレンジがダサい、役者も演出もしょぼい!
【第二話】気持ち悪いのは粘着夫(東出昌大)ではなく恋愛脳満開の新婚妻(波瑠)の方では…?
【第三話】不倫妻が罪悪感ゼロなのは夫を少しも愛してはいないから
【第四話】夫が陽気なイケメンだったら、妻がもっと成熟した女なら、夫婦は噛み合ったのか? 否、結婚していなかったでしょう
【第五話】不倫相手の自宅訪問を時間差攻撃で! 恐怖演出で不倫解消を促進する逆ゲス効果アリ
【第六話】奇声上げ赤ワインぶちまけ!東出昌大の発狂が注目集めて視聴率急上昇、山崎育三郎の思惑は?
【第七話】不倫男女が地獄に堕ちる復讐展開に期待? 視聴率急上昇

正しさに追い詰められる

前回、小田原に唆されたこともあって、夫・涼太に離婚届けの記入を促した美都。涼太が渋っているためまだ離婚成立はしていませんが、美都は新居探しを開始しました。この夫婦のマンション、キッチンがめっちゃくちゃ広くて豪華なつくりで(1LDKですが寝室や洗面スペースは普通、むしろ狭め)、ここだけ見るとものすごく家賃高そうなのですが、夫婦の生活費分担はどの程度の割合なんでしょう。100%涼太が出してそうなんですがインテリア会社(ってなんだろ?)の総務課社員30代、手取りはおいくらまんえんかしら。離婚しても涼太はこの部屋にひとりで住み続けるのでしょうか。

未だに美都が結婚指輪を左手薬指につけっぱなしなことが不思議だったのですが、その理由は「今はずすと涼ちゃんがどう出てくるかわかんないから」だったそう。確かに涼太は、美都への盲目的な愛情が怖いし、腕が長すぎてエヴァンゲリオンみたい。東出さんがこの役で良かったんだなとつくづく思います。というか、美都は涼太を「怖いんだよぉ」と怯えている。まったく信用のおけない相手とひとつ屋根の下で暮らしているって神経すり減らしますよね。まあ不倫したのは美都なんだけど……ですから通常、つまり多数派のケースでは、不倫「された」側が相手への信用を失って疑心暗鬼に陥り、すり減らしていくと思われがち。でもこのドラマは不倫「した」側の心情が比較的多く描かれることで、「した」方もそれを知った配偶者と暮らし続けるのはキツイ、ということを伝えてくれています。うんうん、どっちもキツイ、それが不倫バレ。

そんな不倫バレ家庭・有島家は麗華がすさまじく不機嫌で冷たい態度をとっています。ただ、ある休日の朝には「天気がいいからどこか(子連れで)行こうか」と麗華が提案し、有島くんは一気にホッとした顔になって動物公園へのおでかけが決定。有島くん、このまま許されて夫婦の生活が続けられると暢気に思ってるんでしょうか? 少なくとも面と向かってもう一度、説明と謝罪をしないとバイキン扱いされなくなることはないと思うわー。

いざ外出しようという段になって、有島家の隣人で、幼い娘を育てる主婦・皆美(中川翔子)に遭遇し、二家族で一緒に動物公園へ行くことになりました。でも皆美の夫は、人前で大声で妻を「バカ」呼ばわりする変な男で(ふつー世間体とか気にして言わないだろ、外で)、気分を害した有島くんはその夫を一喝。帰りの車中、冷めた目で「あなたは本当に優しいひとねえ」と言う麗華に、有島くんは愛の言葉を滔々と投げかけるのですが、「まるで結婚式の誓いの言葉みたい」と笑われ、「私は今つらい。つらい私と一緒にいられるの? もうあなたと私とは無理」と突き放されました。必死になって「無理じゃない!」と引き止める有島くん……ううん、あなただって本当は無理でしょ?

この夫婦二組って、不倫がバレていて離婚前提の話し合いが始まっていても、まだ同じ家に帰ってゴハン食べて洗濯して眠る生活をしています。すごくリアル。「えっ、不倫!? やだ、不潔、離婚よ! 今すぐ出て行って、カプセルホテルへGO!」なんてね、そっちのほうが虚構的かもしれません。リアルといえば、麗華の“正しさ”が身近な人間を追い詰めるという描写もそうです。中川翔子は、他人との距離を詰めすぎる(私にとってはとても気持ち悪い)女性を好演しているのですが、自分にまったく自信がなくて、麗華の“正しさ”はただそこに在るだけなのに、自分を攻撃されているように受け止めてしまっています。有島くんもそうで、痛いところ(不倫という事実)があるがゆえに、麗華の“正しさ”が何も責めていなくても、まるで責められているように感じて罪悪感を覚えてしまう。正しい人は特に悪い行いをしていないけれど、周囲が勝手に傷ついていく。そういう側面を持っていると思います。なんていうのは“正しくない人”の言い訳、責任転嫁でしょうか。

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