10年以上前にセックスしたときも痛みがあったが、子宮内膜症のせいなのかどうかはよくわからない。夢子はそのことについて医師に相談することはなかった。「セックスしない」ほうがよほど簡単だった。それもどうかと思うが。
だが、現代の婦人科は性生活の悩みを相談できるような場所にはなっていないのが現実だ。性の生活の質に関しては、現代日本医療はノータッチなのだ。
「怖い」ものでしかなかったセックスだけど…
精神的にも肉体的にもセックスはノーサンキューだったこの10年だったが、いまは子宮摘出を控えている。この事実が皮肉にも彼女を性的に開放してくれた。
これまでずっとペンディング状態だった自身の子宮内膜症はこれである程度終息するだろう。得られた安心感は絶大で、夢子にこう思わせてくれた。
「このタイミングならコンドームさえつければ絶対妊娠しない気がする! 一生に一度の子宮摘出前後でセックスの感じ方における違いを検証するためなら、多少痛みがあっても我慢できる!」
そのおかげで夢子は「子宮とちんぽをジャストミート計画」を立てることができたのだ。
ただし前回でも話したように、依然としてどうすればちんぽにありつけるのかはさっぱりわからなかった。一度きりの邂逅ではなく、手術前と手術後にわたり継続的にちんぽを入れてくれる人を見つけるのが理想である。できればピルをやめるまでにそういう人材をみつけておきたい。ピル休止まであと1カ月の時間しかない。
同時に「バカバカしすぎる思いつきだ」と横槍を入れてくるもうひとりの自分も粘っていて、なかなか夢子は行動できずにいた。
さあ夢子どうする? オレはまだこの時期、そんな夢子を眺めているしかなかった。