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「女ってのは、すぐその気になる」言説を撒き散らす男性向けマスメディアとオジ様芸能人

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武田砂鉄

武田砂鉄/論男時評(月刊更新)

 このところ、『ワイドナショー』で時事問題に言及する松本人志の見解に首を傾げることが多い。彼のコントや漫才を幼少期から好んで見続けてきたからこそ、力の強いほうに迎合していく見解を浴びるのが悔しくすらある。共謀罪について問われた松本は「僕はもう、正直言うと、いいんじゃないかなと思っている」と賛成の姿勢を示した。そのことにまず驚いたが、続いて「冤罪も多少はそういうことがあるのかもしれないですけど……」と言ってのけたのには呆れたし、周囲がそのまま見逃したことに愕然とした。「罪なき人が捕まることを容認する」というのは、その発言者が誰であれ、周囲が咎めるべき発言ではなかったのか。

 俳優・小出恵介の未成年女性への淫行が発覚し、無期限活動停止が報じられると、松本は、未成年女性への罰則の必要性を強調、「多少罰を設けた方が、絶対こういう事件は減ると思うんですよね」と言及した。小出をフォローするかのように未成年女性の「落ち度」をはかり、あちこちのワイドショーで「もしかしたら彼が被害者だったのではないか」とのムードが作り出されていく。女性側、そしてその知人達の声も漏れてきたが、それらの素材をつまみ食いしながら、あたかも小出に非がなかったかのような方向へ持っていく力技が気色悪い。

 今件が発覚してすぐ、『バイキング』に出演した中尾彬は、以前、高樹沙耶が逮捕された時に「あいさつしない役者が3人いるって言ったでしょ。その中の1人(が小出恵介)だよ。今、バラすけど」と言い、そういう態度だからこういうことにもなるんだよ、とほのめかしてみせた。彼の行為自体、自身が謝罪文で記した通り、非道なものである。そこに「挨拶をしないからこうなる」と言わんばかりの見解がぶつかる。よくわからない付帯条件で、事の性質を変換させようとする業界の先輩達がいる。坂上忍は「バカだと思うんだよね、バカなんだよ。この女の子も」と言った。芸能界のオジ様たちが団結して、「女性も悪かった」を高め、「小出が悪かった」を低めようとしている。

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武田砂鉄

ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論──テレビの中のわだかまり』がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「SPUR」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。

@takedasatetsu

http://www.t-satetsu.com/

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