これほどスッキリした終わり方をするドラマは、稀じゃないでしょうか。さらに視聴者が見たいであろう後日談までばっちり用意しているんだからスゴイ。一年後の有島家は「昔より円満かもしれません」と麗華が言うほど、外から見れば温かい家庭で、有島くんはイクメンの愛妻家として振る舞っています。さらに皆美一家にも遭遇、皆美は第二子を出産間近で、あんなに妻を毛嫌いしていた夫が妻と手をつないで歩いているのだから有島夫妻もびっくり。
有島「変わったなあ~」
麗華「色んな夫婦が、いるのね」
結婚式場としても利用される一軒家レストランへ、香子カップル(彼氏はなんと美都の勤務先の院長)と食事に訪れた美都は、偶然にも涼太と再会。涼太は“新しい彼女”らしき綺麗な女性と二人でおり、結婚式のパンフレットを手にしています。会話を交わすこともなくすれ違い、美都は平然を装いつつも再婚するのか……と衝撃を受けるのですが、実は涼太は仕事(建物改装の打ち合わせ)で来てるだけで連れの女性は会社の後輩でした~というオチ。美都は誤解したまま、今なお「運命の出会い」を待ち続けている……。
夫に失望し美都への憎悪を抱えるという内心の変化を余儀なくされた麗華。絶対に失いたくない妻と子の存在を確かめ気を引き締めた有島くん。亡き母に似て天真爛漫かつ自己中心的な美都への強い愛炎を鎮火できた涼太。主要な三人の登場人物は、物語の最初と最後で心の内側が大きく変わりました。変わらざるを得なかった。しかし前述のように美都だけは変わりませんでした。ボロアパートでの自炊など生活自体は変化したけれど、彼女自身のものの見方に何か違いが出たかといえば、おそらくない。それは結婚前後、不倫前後、離婚前後どのタイミングでも変化していなくて、ある意味、強い。
ひとつだけ変化した点があるとすれば、それは母親への感情でしょう。美都はスナックで働きながら一人で自分を育てた実母のことを疎ましく思い、軽蔑もしていました。衣食住は用意してもらったけれど、ろくに「育ててもらった」という感じもなく。彼氏らしき男はちょいちょいいるものの独身を貫く母親を「幸福な女ではない」と見ていて、母みたいにはなりたくないと思っていた彼女が、たいして好きではない男だった涼太と結婚したのは必然。「幸せな結婚」をして母のような女性になる未来の可能性を遠ざけようとしていたのだと思います。けれど、最終回で美都は「お母さんってピュアだから結婚しないのかも」と言います。離婚騒動を経て母娘は以前より仲良くなったようでした。母娘といえば、麗華も実母との確執がありました。浮気男で家に居着かない父親を愛し続ける実母に嫌悪感さえ持ち、「お母さんみたいになりたくない。反面教師だ」と言っていたんですよね。こちらも麗華自身が、不倫した夫との関係修復を選んだことで少し母への眼差しが変化したかもしれません。
もう最終回に育三郎の見せ場がなかったのは残念ですが、7月からは他局で主演ドラマがスタートするんだから淋しくなんかない! 育三郎クラスタは金曜日に会いましょう。
(ドラマ班:下戸)
【第一話】再現VTRみたい…アレンジがダサい、役者も演出もしょぼい!
【第二話】気持ち悪いのは粘着夫(東出昌大)ではなく恋愛脳満開の新婚妻(波瑠)の方では…?
【第三話】不倫妻が罪悪感ゼロなのは夫を少しも愛してはいないから
【第四話】夫が陽気なイケメンだったら、妻がもっと成熟した女なら、夫婦は噛み合ったのか? 否、結婚していなかったでしょう
【第五話】不倫相手の自宅訪問を時間差攻撃で! 恐怖演出で不倫解消を促進する逆ゲス効果アリ
【第六話】奇声上げ赤ワインぶちまけ!東出昌大の発狂が注目集めて視聴率急上昇、山崎育三郎の思惑は?
【第七話】不倫男女が地獄に堕ちる復讐展開に期待? 視聴率急上昇
【第八話】不倫がバレたら「前と同じ」になんて絶対なれないんだ
【第九話】強欲で、女のダメなところが煮詰まったような女への「天罰」と正義
<そのほかのドラマレビューはこちら>
▼母になる