“霊長類最強女子”として知られるレスリング選手・吉田沙保里(34)が、6月24日に自身のインスタグラムで新調したまつ毛エクステとネイルの写真を披露。マツエクの施術をしてきれいに整えられた目元と、青と白、そしてアクセントにゴールドを使った夏らしいネイルだ。吉田はテレビやイベント出演の際に着用した可愛らしい衣装や、5月に「Girls Award 2017」に登場した際のドレスアップ姿などもインスタグラムで披露している。
女子レスリング世界大会16連覇の大記録を持ち、中国では「絶望」と呼ばれているという吉田だが、同時にいわゆる“女性らしい感性”を携え、美しいもの・可愛らしいもの・女子向けと銘打たれたものなどをこよなく愛していることが伺える。彼女は肉体的・精神的な強さと、可愛いものを愛でる心は共存できると教えてくれているようでもある。
女子力の高さ(=可愛らしさ)は「女性ならなるべく目指すべき」規範のひとつとされている一方で、それを過剰に表現するとケチをつけられる取り扱い注意の代物だ。ネット掲示板「ガールズちゃんねる」では吉田の女子力について議論が紛糾している。吉田が2~3週間に一度という理想的とされる頻度でまつエクやネイルを交換しインスタに写真を投稿していることについて、「自分の売り方間違ってる」「吉田沙保里が綺麗に着飾ったところで…」「アスリートが女子力に目覚めると、たいてい成績落ちる」と否定的な声を寄せる女性。他方、「綺麗になろうと努力することの何が悪いのさ」「可愛くなろうとしてることを、なんで『なんか違う』とか言われなきゃいけないの」と応戦する女性。女性が着飾ることや恋愛に意欲的なことを「女性らしい」と肯定する価値観と、「浮ついている」と叱咤する価値観の両方が拮抗している。もちろんその背景には、この矛盾に気付きながらも受け止めざるを得ないそれぞれの女性の体験があるだろう。吉田が好きなものを好きなままでいることに、ケチをつけたり批判的な眼差しを向ける書き込みは、女性たち自身がその矛盾に引き裂かれていることを表していると考えられる。
また、「女子力と戦闘力は関係なくない?」「残念ながら、この世界はハガレンの世界じゃないので等価交換の法則はないんです~~」と、吉田の女子力と戦闘力が反比例するかのような物言いへのブーイングも出ている。女子力と戦闘力に相関関係を見出すことは、“女らしからぬ偉業を成し遂げるためには、女であることを捨てなければならない”という世迷いごとを認めることになってしまうだろう。リオ五輪バトミントン女子ダブルス金メダリストの高橋礼華(27)は、「可愛いネイルはテンションが上がる」と中指に金メダルを模したデザインのネイルで参戦していた。2008年の北京五輪で金メダル獲得を果たしている女子ソフトボール日本代表も、2020年の東京五輪に向けてお揃いの金色ラメネイルを披露している。何も「女子力=ネイル」では全くないが、女を「捨てる」ことなしに偉業を達成することは十分可能だ。
(ボンゾ)