カフェや料理教室などで気軽に楽しむことができ、社会意識の高い人がたしなむ印象のある〈マクロビ〉。これはマドンナにトム・クルーズ、マイケル・ジャクソンなどが実践したことでも広く知られ、2000年代に日本でブームとなった東洋的な食事法&思想です。
ものごとのすべてに陰と陽があり、そのバランスをとる中庸を保つことが健康であると考えられています。マクロビにおける主食は穀類(玄米、雑穀、全粒粉の小麦製品など)、副食に野菜、豆類、海藻類。避けるべき食品は、肉魚、乳製品、卵、精白したもの(砂糖や小麦)、食品添加物、化学調味料。食品は丸ごと摂取するのが流儀で、あく抜きせず、根や皮も食べるのが特徴です。
一部では、マクロビ理論の「玄米菜食が癌に効く!」というミラクルが信じられていたり、そこまではいかなくとも、「旬の野菜をたっぷり家族に食べさせたい」「普通の食生活よりもなんとなくヘルシー」「アトピーだから体質改善をしたい」etc……さまざまな動機が入り口になっているのを、よく耳にします。
では逆に、やめるとしたらそのきっかけにはどんな出来事があるのでしょうか? 今回は、40代主婦Hさんの語ってくれた〈脱マクロビ体験〉をご紹介していきましょう。
Hさんは現在、高校生のお子さんと夫との3人暮らし。20代の頃から自然派嗜好で、その一貫でマクロビにハマり、子どもはシュタイナー教育※1を実践する幼稚園、小・中学校、高校へ通わせるという、いわゆる〈こだわりの〉生活を送っているよう。
※1 シュタイナー教育
オーストリア生まれの哲学者ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)が提唱した教育思想・教育実践。人間は7年ごとに成長の節目が訪れると考え、その発達段階にあわせた教育方法が提唱された。デジタルメディアや点数評価を排除、強制はしないが菜食を推奨するようなニュアンスで、自然であることにこだわりを持つのが特徴。
体調が悪く、常にイライラ…!!
ところが、ある時期から体調が激変。思い当たる原因は、マクロビの教えに従い、動物性たんぱく質をとらなかったこと。それでも〈ゆるめ〉に実践していたので、外食時に多少食べる程度はOKとし、家でも魚は食べていたのだとか。
「決定的だったのは、食べても食べても体重が減ってしまったことです。毎日玄米ご飯を2杯も3杯も食べているのに、身長164センチで体重が40キロ代前半になってしまって。その当時は定期的に体重を測る習慣がなかったので、気づいたら……という感じでしたね。お尻の肉も落ちたので痛くて湯船にも座っていられないし、常にイライラしていて夫ともケンカばかり。実家は普通の食事なんですけど、そこで肉が食卓に上がっているのを目にするだけでも、イライライライラ。生理も不規則になってきて、もうこれはまずいなと」
夫は「なんと言われようと俺は肉を食べる!」とマクロビを拒否していたため、〈玄米、野菜、魚〉中心の食生活は、子どもとふたりで続けていたHさん。ところがついに、子どももマクロビを拒否。これが大きなきっかけとなったといいます。
「子どもが小学校に上がるタイミングで、『僕はもう玄米を食べたくない』と宣言されたんです。それからマクロビとはすっぱり手を切り、肉を食べ始めたらイライラしなくなり、生理ももとに戻り、体重も適正に。本当に気づいてよかったですよ。それでも、お弁当に肉や冷凍食品を入れるときは、いまだに少し罪悪感を持ってしまいますけどね(笑)」
マクロビな菜食生活を10年間つづっていたのに、突然趣旨替えしてネットで話題になったブログが思い出されるお話です。『僕が菜食をやめた理由』でも、「体力の低下を感じた」と語られていましたね。
Hさんの場合は単純にカロリー不足があるでしょうし、マクロビが日本の伝統的調味料や天然塩をよしとすることから塩分過多傾向になることや、玄米が消化不良を起こしやすいなどの問題はよく知られています。。