また、豆類でたんぱく質をとったとしても、植物性のものは繊維などが含まれることから体内での利用率が低く、結果としてたんぱく質不足になり、体調不良につながることも巷ではよく指摘されているよう。
「逆にマクロビをやめた今でも魅力を感じている点は、甘さ控えめで美味しいスイーツや、出汁をしっかりきかせるという調理法です。マクロビをやっていた当時は、手作りのお菓子だけでなく、南部せんべいとかシンプルなものを選んで市販のお菓子を楽しんでいましたが、それらは今も大好きです」
小さな子どものいる家庭でマクロビをはじめとする〈自然派〉な食生活を実践すると、砂糖を使ったおやつの問題は大きいよう。お友だちの家などでジャンクフードやスナック菓子をむさぼり食べてしまうというトラブルもよく聞きますが、その点に関しては〈シュタイナー幼稚園〉という教育環境のおかげで、特に問題なく過ごせたとか。しかしこのシュタイナー教育のコミュニティは、トンデモ案件との遭遇率が高いことを常々実感していたそう。
「園や学校にはシュタイナー教育に興味のない普通の家庭の子もいるものの、基本的には周りの家庭も自然食が多かったですね。だから『周りの子が食べているから、ジャンクフードが食べたい!』にはなりませんでした。でも、3.11の震災のときは幼稚園にEM菌※2を巻こうという話が持ち上がり、もめごとが発生しましたよ。私も当時は放射能が怖くて、飲用として販売されているEM菌ドリンクを買ったんですけど、どうしてかその一線は踏み越えることができず、結局手をつけずじまいです(笑)」
※2 EM菌
有用微生物群(Effective MicroorGanisms)の略。元琉球大学教授の比嘉義男氏が提唱し、土壌改良、生ごみのたい肥化のほか、体内被曝予防、抗ウィルス作用、河川の水質浄化等の効果効能が謳われている。その他いじめがなくなり交通事故にあっても大事に至らない、などEM菌がどう作用することによるものなのかよくわからない効果効能も謳われるが、比嘉氏曰く「EM菌は神様」とのこと。一般的には農業用資材としての評価は低く、自治体の実験では水質改善効果もないことがわかっている。
マクロビにはまった原因は、子ども時代にあり!?
「ほかにも集金があると、小銭をティッシュでくるんで〈音がしないように〉する工夫をしなくちゃいけないなど、独特なルールがたくさんありましたね。シュタイナーがそもそもスピリチュアルな哲学ですから、スピ方面にどっぷりハマっているようなおうちは多かったです。どの家庭も、ホメオパシーは、もちろんデフォルトという感じです」
ちなみになぜお金をティッシュでくるむかのかと言うと〈必要以上にお金を意識させてはいけない〉という理由からなのだと言うので、驚きです。Hさんは、マクロビ生活は社会生活の妨げにはならなかったものの、学校関連の活動に熱心になりすぎ鬱になり、主治医の勧めにより、フェイドアウト。子どもが高校生の今は、シュタイナー教育関連の保護者たちとの交流も最低限になり、ごくごく普通の暮らしをおくっているのだとか。
「シュタイナー教育を取り入れている親たちって、子育てが自己実現になっている人が多いなという印象です。シュタイナーに限らず、お受験に一生懸命なお母さんも同じでしょうけど。ちなみにうちの母も、そんな感じでした。母は大学に行きたかったけれど家の都合で進学することができず、だから学歴コンプレックスがすごい。私には常に『勉強しろ!』と言っていましたね。一般的な学習やテストの点を重視しないシュタイナー教育に惹かれたのは、その反動かもしれません」