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西洋医学への不信感に目覚め、“膣系女子”に転身した女性が放つ呪いの書/徹底検証! 話題の1冊『ちつのトリセツ』がいかにトンデモ本か【2】

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 子宮系女子※1の亜種として、〈膣系女子〉をご紹介したのが、2015年夏。当時の記事「10万円のセッション、膣ハグ、ひとり宇宙子宮を崇めすぎて魔女化する女たち」では、膣ハグ(膣に指を入れてキュッと締めること)、膣瞑想(瞑想中の意識を膣へ向ける)、膣冷え(低体温のことらしい)と数々の珍ネーミングを披露してくださった劒持奈央(けんもつ なお)さんにスポットを当てました。

1子宮系女子=〈子宮の声は魂の欲求であり、その欲求に忠実になるとすべての願いが叶う〉という自己啓発情報を発信する一派たちのこと

 そして今年、また新たに膣系女子が登場。『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)なる本を上梓した、原田純氏です。同書は3月に発売され、7月には天下の朝日新聞で取り上げられAmazonの「家庭医学・健康」ジャンルで1位へ躍り出ているという快挙っぷり。

 これは膣ハグなどのトンデモとは別モノの、有益な情報が詰まっているのかも? そんな期待に胸ふくらませ、Amazonに掲載されている「出版社からのコメント」を読んでみると……

恥ずかしい、いやらしい、下品、不潔……。そう考えて、わたしたち日本女性は、長い間、ちつをほったらかしにしてきました。ほったらかしにすれば、ちつはおとろえて、劣化するのに、そんなことすら知らなかったのです

 あー、期待して損した。もう、すべての女が自分の膣を〈下品・不潔〉と思っているという前提にズコー。

 性器をイヤなもの扱いする層の知識のなさにつけこみ、トンデモレベルのお説をどれだけ言いたい放題しているかは、一足先に桃子さんの連載にてご報告済みですが、当連載でも補足として、ツッコみポイントをご紹介していきましょう。さあ、新たな膣系女子が力説するお説はいかに。

「健康のため」という言い訳がないと、自身の性や性器と向き合えない/徹底討論! 話題の1冊『ちつのトリセツ』がいかにトンデモ本か【1】

 同書は桃子さんの記事でも紹介されているとおり、編集者である著者・原田氏がたつのゆりこ氏という助産師と出会い、膣をケアすることの重要性を知り身をもって体験してみたというもの。で、「膣をケアすることの重要性」って? それはなんと、膣を使わないと血流が滞り〈カチカチ〉になり、冷え、姿勢の悪さ、ヒップラインの崩れなどにつながるのだと言います。

膣をケアして、手軽なご利益を得たい

 さらにこんな科学的根拠なき〈脅し〉が続々と登場します。

・女性器が乾燥したり、硬くなったり、たるんだりすれば、体だけでなく脳にも影響が出てくる。精神的にも不安定になり、記憶力も衰え、不定愁訴にもつながる。

・膣や会陰が冷えて硬いままだと、産む力が弱くなり難産になる。

・膣が硬いと生理不順、生理痛、性交痛、頭痛、肩こり、腰痛、便秘、尿漏れなど、さまざまなトラブルが起きる。

・砂糖のとりすぎやセックスレスが、会陰が硬くなる原因!

 だから膣のメンテナンスをしっかり行い、健康のためにも性を楽しみましょう(=膣を使いましょう)というわけです。「女としての魅力を失わず楽しみながら生きるためには、愛し愛されたいと願い、セクシャルなエネルギーを肯定することが大切」「女性であれば年齢に関係なく、膣や会陰を柔軟にしておくことが大切」と力説されますが、膣を使って性を楽しむことこそが、女の真の健康! というお説は、子宮系女子の主張と大差なし。膣ケアでそれらがまるっと改善されるという考え方は、スピリチュアルで〈これさえすれば神様に愛される!〉という手軽なご利益を得ようとしてる人たちの精神構造そのものでしょう。

 桃子さんの視点からは、「ヒステリーが子宮の病気とか言っていた時代と変わらない」というツッコみが登場です。

「膣ケアの必要性に話を結び付けるためか、『男性に対して性的興味が持てなくなったらエキセントリックばあさんになること間違いなし〉』なんて書いていますけど、結局この本って〈女は男によって女にしてもらう〉って発想なんですよね。女性はそのまま女性でいていいのに。女性の人間性が、なんで生殖器によって左右されなければいけないんでしょう。『挿入が難しくても、パートナーとふれあったり体をなであったりすれば、それだけで気持ちがゆるむので膣や会陰もやわらかくなる』っていうのも、普通にちょっと考えればそんなはずないってわかりますよね? 一見まともそうな著書が、あっさり狂わされている感じも、ちょっと怖いですよこれ」(桃子)

 著者に膣のあれこれをふきこんでいる監修者は助産師ですから、男女にどんどんセックスしてもらわないと商売あがったりという事情もありそうです。そんな監修者の都合と、やたら性に忌避感を持つ著者がダンジョンでばったり出会い、おかしなモンスター(同書のことです)が生まれてしまったのでしょうか。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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