こっちの勝手な都合で人を募り、勝手な都合で突っぱねる。夢子はこれまで就職やバイトの選考に落ちて不採用になった経験が腐るほどある。そのたびに落ち込んできたことを思い出して心が痛んだ。これまでもらう側でしかなかった“お祈りメール”を、ひょんなことから出す側になるなんて、人生わからないものだ。
「申し訳ありませんが今回は見送らせてください。よいお相手がみつかるようお祈り申し上げております」
と、できるかぎり丁寧なメールを送った。こうも付け足した。
「こちらの勝手で不愉快な思いをされたかもしれませんのでブロックされたり、フォロー解除していただいても大丈夫です」
覚悟していたが、ほとんどの人が「こんなことでブロックやフォロー解除しませんよ」と大変あたたかかった。みんないい人だな!
夢子の面接プラン
厳正なる選考の結果、そのうちの2名と面接することにし、両者を同日のアポにすることに成功した。両者とも容姿端麗なやせ形である。先方さえ嫌でなければ、夢子とはどちらとも性交できると思った。応募をかけた週のうちに、もう顔合わせができそうだ。
想定よりも早いスピードの進行しに、夢子は戸惑ってもいた。やはりネット経由で知り合った人と会うというのはまだまだ夢子にとってはホラーだった。いろんな犯罪に巻き込まれる可能性もある。やってきた人がジャック・ザ・リッパーのような連続殺人鬼だとしてもこちらにはわからない。
やばい人ではないこと確認するための面会にしたい。かといって、万が一変な人だった場合あまり長くご一緒するのも避けたい。
夢子が頭をひねったプランはこうだ。人通りの多い場所に位置するカフェで待ち合わせ、30分ほどお話したのち、迅速に帰っていただく。2番目の人とのアポは両者がかち合わない程度の時間を置いて設定。同じく30分程度お話しし、後に合否を連絡する、というものだった。事前の連絡では候補者2名とも「楽しみにしています♪」と好感触だったし、あとは決行するだけである。
嫌な予感は、していた。
当日、夢子はがちがちに緊張しながら待ち合わせ場所に向かった。恐ろしさで頭が真っ白になっており、自分がどうやって約束の場所にたどり着いたかわからなかった。
だがしかし、面接会場であるカフェでスマホを開くと、アポ1号はTwitterアカウントごといなくなっていた。
前の夜、LINEを交換し、「では明日お願いします」と打ったら返事がこなかったので、嫌な予感はしていたのだが。LINEで写メをくださいといわれても送らなかったのが原因だろうか? でも、だって、写真は送っちゃいけない教えだモン……あたし、悪くないモン……。
呆然と考えつつも、しかしまだアポ2号がいる! と気を取り直した。しかし、注文したコーヒーがやってきたころ、2号からもキャンセルが入った。アポ2号はこう語った。
「やっぱり怖いです」
ちんぽが入らないどころではない。男とお茶すらできない。窓の外を見ると、ぱらぱらと雨が降っている。キリキリとした痛みが、お腹に刺し込んできた。
「怖いのはこっちだ。」
夢子はそうつぶやいた。
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