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新生児に膣液を塗る、精子で子宮頸がん治癒…背筋も凍るスピリチュアル物件

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怖いよぅ! Photo by greg westfall from Flickr

 後半は妙に涼しく「もう秋!?」なんて錯覚すら覚えた今年の夏、皆さまはどうお過ごしでしたでしょうか。夏らしいことをした人もそうでない人も、夏の風物詩〈怪談〉で、この季節を締めくくってみてはいかがでしょう。と言っても〈謎物件〉をウオッチングするのが当連載ですから、幽霊や因縁の登場しない〈ふんわり怖い実話オンリー〉ではありますが。

第1話「恐怖の菌活…新生児に膣液を塗る」

 トップバッターは、「新生児に母親の膣液を塗る」という、謎の菌活からご紹介しましょう。なぜそんなことをするのかというと、次のような〈仮説〉が元になっているようです。

・普通分娩で生まれる赤ちゃんは、産道(膣)を通る過程で母親の膣内にいる細菌に触れる。それが赤ちゃんの腸内細菌へいい影響を及ぼし、環境へスムーズに順応するための免疫が作られる。
・そのプロセスを経ないで生まれてくる帝王切開の赤ちゃんは不利! じゃあ膣液を塗ってあげればいいんじゃない?

 非常に雑な説明で恐縮ですが、数人の医師が共同で書いたそんな感じの論評が元ネタとなり、海外のごく一部で行われるようになったのが、〈vaginal seeding(膣液の植え付け)〉です。ところがこの処置に科学的根拠はなく、健康効果どころか母親の膣液経由でB群連鎖球菌(通称・溶連菌)や単純ヘルペスウイルス、クラミジア、 淋菌などの病原体に感染する可能性があると、ほかの医師から「待った!」の声が上がっているそう。詳しい内容は、昨年3月に掲載されたヨミドクターの記事「『膣液を新生児に塗りたくる』に医師が待った!」で詳しく紹介されていますので、ご興味のある方はご参照を。

 イルカを立ち会わせる水中出産やら胎児に音を届ける膣内スピーカーやら、海外の育児出産ネタはなんとエクストリームなことよ。なんて半笑いになっていたら……国内にもいたよ、真剣に検討する人が! 帝王切開が予定されているという女性のブログでは、こんな記事がアップされていました。

・膣液を新生児に塗るなんて、ちょっとびっくりするけど、免疫力が上がるなら大切な処置! 
・日本の病院ではやってないから、自分でこっそり筆で膣液を塗るか考え中~。
・予防接種はしないと決めているので、自然に多くの免疫を獲得できるようにしたいんですよね。

元看護士〉のプロフィールを、信じたくない発言しか見つけられない! 実行したかどうかは書かれていなかったため不明ですが、産後のバタバタで興味が蒸発したことをお祈りしておきましょう。ほかには、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会顧問という肩書を持つ女性のブログにも、同ネタが登場。仮説を引き合いに「じゃあ膣液を新生児になめさせたらどうなるのか? 塗布よりは効果がありそう!」という魔改造案件です。伝言ゲーム的に変なアイデアが上書きされ、さらなる悪魔合体が行われる予感でいっぱいです。

第2話「尿や精子が病気を治す!? 珍レメディ」

「症状をおこすものは、症状を取り去る」という考え方(類似の法則)をベースにして、ある成分を極端に希釈したものを砂糖玉に配合した〈レメディ〉を飲むと、病気が緩和されるという超有名物件ホメオパシー。K2シロップ事件をはじめ(ご存じない方は検索を!)、公立中学校の養護教員が保健室でレメディを生徒に配っていたなどいろいろな出来事がありますが、今回ご紹介したいのは、ぶっとび度500%の〈自作レメディ〉です。

ホメオパシー的ガン治療??父の尿の膿のレメディー6c手作りしてみました」という記事()をアップしていたのは、自然療法のセミナーなどを行っているホメオパスの女性。末期の膀胱がんである父親の尿からは、膿が排泄されていたといいます。それならば、その膿で作ったレメディを飲めば、体が「こんなに膀胱に膿が溜まっているわ! 排泄してしまわなければ~!」と反応すると考えたホメオパス。さらなる応用編として「鼻くそが出まくるんだったら、鼻くそのレメディーを作ればいいし」「アトピーで皮膚が零れ落ちるんだったら、皮膚のレメディーを作ってもいいです」だそうです。成分がほとんど残っていないほど希釈されているとはいえ、嫌すぎるんですけど。

 排泄物からレメディを作ろうという発想は珍しくないのか、〈夫の精子で作るレメディ〉なる物件もあります。「子宮頚がんを治した方法」というタイトルの記事から、赤字部分だけ抜粋しましょう。

「私の子宮頚がんは、夫の精子を非自己であると認識したため、異タンパクが入ることで細胞が異変を起こし始めたのではないか?とホメオパシーの考え方の基本である『同種の法則』が閃いたのでありました」

 がんの原因は、夫の精子。だから夫の精子のレメディを作ればがんが消えるよね! ということのよう。で、完治したそうです。その他楽天では「般若心教のレメディ」などの販売されていますから。ホメオパシー界も、単体で十分、百鬼夜行状態です。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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