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分娩台を嫌悪し「自然なお産が当たり前!」と主張するトンデモ出産論の源流

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分娩台があるから無事に産まれた命は、数え切れないほどある。Photo by Eric Lewis from Flickr

 靴下重ね履きで毒素が出たり、子宮や膣をお手当すれば病気知らずになったりと、巷にはおかしな物件が山のようにありますが、その界隈で耳にするのは「またか」と思わせるテンプレトークです。それっぽい単語をランダムに組み合わせる、文章作成系ジェネレーターでも使ってんのかと思うほどに。「毒素」「免疫」「子宮・膣」「カルマ」「トラウマ」「現代の生活」「劣化」「体の声」「不自然」「冷え」「体本来の」「五感で感じる」「女性性」とかの単語カードを組み合わせ、架空のサービスをプレゼンするなんてゲームが速攻作れそうな勢いです。

 そのテンプレはどこで生まれたのでしょうか? それらの「源流」をたどるシリーズを、当連載の中でスタートさせたいと思います(不定期ですけど)。まずは、「自然なお産」で語られる、分娩台嫌悪から始めましょう。

 先月末、「7年ぶりに常勤産科医 横須賀市民病院、市長『ほっとしている』」なんてニュースがあったように、〈お産に医療介入は必要なし! 自然なスタイルで行われるべき〉なんてノリはそろそろ下火かと思われますが、それでもいまだに分娩台でのあおむけ体勢をはじめ、帝王切開、吸引・鉗子分娩、陣痛促進剤、会陰切開を、親の仇かのごとく叩きまくる〈自然なお産支持層〉が一定数存在します(無痛分娩はもってのほか)。

 そこで使われまくっているテンプレトークの源と思われる、書籍『分娩台よ、さようなら。あたりまえに産んで、あたりまえに育てたい』(大野明子著・メディカ出版)をご紹介していきましょう。初版は、1999年の発行です。

「自然なお産」の火付け役は同書の著者ではなく、古民家で妊婦に薪割りさせるなど、独自のスタイルを取り入れたことで知られる、吉村正医師でしょう(現在は引退)。しかし吉村医師は巷から見れば〈変わり者のおじいちゃん先生が、昔ながらのお産を行っている〉という印象だったかもしれません。キャラの強烈さや、カルト風味すら感じさせる吉村医院のシュールな光景。それらのすさまじいインパクトは、一部のマスコミやストイックな自然派ママたちにはウケたものの、ごくノーマルな感覚を持つ女性たちを遠ざけてくれるシールドとして機能していたのでは。

著者が説く「あたりまえのお産」とは?

 ところが、その特異な世界観を継承しながらも、子を持つ母親目線も交えながら女性たちの気持ちに寄り添って語り掛ける体(てい)の同書は、多くの女性のハートをつかんでしまったのではないでしょうか(著者は吉村医師を師と仰いでいるよう)。なので〈源流に近い〉くらいの位置づけでしょうが、おかしなテンプレトークを定着させた戦犯のひとりであることは確かです。

 さてすっかり前置きが長くなりましたが、同書は〈あたりまえのお産〉とは何かを語る、啓蒙書です。全編において執拗に「あたりまえ」が連呼されるので、COWCOWのあたりまえ体操が脳内BGMとして流れてきました。

(例のメロディーで)
「分娩台で、会陰が裂けた~、トラウマ! あたりまえ体操~
(訳:病院で行われるあおむけ姿勢だから、会陰が裂けるんだという主張)

「自然に産めば、母乳はあふれる~、常識! あたりまえ体操~
(出ない人は産後のケアが間違っているから! というこの界隈定番の主張です)

「あたりまえのことを、たいそうにしたよ!」自然なお産の神様が、ポロシャツ&黒パンツ姿で〈あたりまえ体操 自然なお産Ver.を歌っている姿まで、見えてくるような気がします。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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