連載

分娩台を嫌悪し「自然なお産が当たり前!」と主張するトンデモ出産論の源流

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 著者がこのような思想を持った背景には、医師になる前に体験した、ご自身の不満が残る分娩体験にあることが、本書には書かれています。叔父の医院での初産で雑に扱われ、「コレジャナイ」感満載だったようです。そして「ほんもの探し」がはじまったとのこと。さらにかの有名な母乳育児法・桶谷式の発案者・桶谷そとみ氏のおっぱい本に出会ったことも、大きなきっかけだとか。

 謎物件をウオッチングしていると、「科学的根拠に基づいた医療が主流の世の中で、なぜこうなったのだろう」という医師がちらほら存在しますが、なるほど、大野氏に関しては府に落ちました。前出の体験からの思いや、1980年代にイギリスで登場した「アクティブ・バース」(主体的で自由な体位でのお産)へのあこがれにも支えられ、医師になったのですから、数ある情報の中から自分好みの情報だけを認識するという〈選択的知覚〉がバリバリ発動されたことでしょう。医学を学ぶなかで「お産や子育ては、自然なのが一番理にかなっている」と改めて確認したとのことですが、フラットな視点で観察できていたとは考えにくいものがあります。

難産は「努力が足りない」から?

 さらにお人柄からも、極端な面を感じます。〈おっぱいは1歳過ぎても飲ませてあげて〉というアドバイスの下りで見せる「よちよち歩くようになった子どもが、『パイパイ』と言いながらおっぱいを飲みに駆け寄ってくるうれしさはおかあさんだけの特権です」という甘ったるい表現。その一方で、体重増加で難産になる妊婦を〈現代風座敷ブタ型難産〉と命名して貶める。

 こういったエキセントリックなお人柄はご自身の産院・明日香医院でも炸裂させていたようで、氏の診察を受けたことのある人たちのブログなどでは、怒りの声も少なくありません。陣痛が長引いたり、節制を重ねたうえでも体重が増えたりすると、「(安産にするための)努力が足りない」と怒られたなどのお話がちらほら。どうも精神論ありきで、現代のニーズとはずれが生じていそうです(だから現在は、著者の医院は分娩中止しているのかもしれません)。

 自然派系の子育てセミナーやショップ、ときには助産院などで、もし分娩台をはじめとする病院のお産をディスるトークを投げかけられたら、いかに強引で感情的な主張であったかという源流に思いをはせ、真に受けないのが一番でしょう。源流がフィットする方はどうぞそのままに。って、さらに広い海へ放流されても困りますが。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

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