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子の病気=母親に原因あり! 「母原病」の源流をたどるとトンデモ医師にたどり着く

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母が悪いと、子が病む?Photo by Johnny Silvercloud from Flickr

 女優の真木よう子が、情報番組『バイキング』(フジテレビ系)で「育児放棄して男と火遊びしてる」とされて 「ちゃんと母親をやれ」と盛大に叩かれたそうで、なんのこっちゃと当サイトの関連記事を読んでみると、8歳の子どもを元夫に託して深夜に元彼と食事をしたという話です。「自分の妻が同じことをやったら許せない」「女として寂しいのでは?」なんてご意見が出ていたそうで、盛大にズッコケました。

 記事でも指摘のとおり、子どもをひとりで〈放置〉したわけでもなし、父親の元で過ごしている間、現在独身の真木が友人男性(元彼)と食事をして何が悪いのでしょう。この出来事が象徴しているのは、この国は「育児は母親が主体で自分の時間はすべて子どもに注ぎ、誠心誠意全力で行うべき」という考えが根強いということでしょう。

 子どもに障害があっても母乳が出なくても、不登校になっても病気になっても、何でもかんでも「母親のせい!」という空気で責められるのは、多くのお母さんたちも体験しているのではないでしょうか。直接そうは言われなくても、子どもに何かあれば真っ先に「私のせいで……」と自分を責めてしまうお母さんも多いと聞きます。しかし〈育児の責任〉ということであれば本来は父親も担うべきなのですが、なぜ母親ばかりに? 世界では共働き&父親が積極的に育児に参加する国も多く、そもそも日本でも大正時代までは、ここまで母親が育児することが絶対視されていなかったと言います。今回は、この〈母親責任論〉の源流をご紹介していきましょう。

約40年前に登場した「母原病」

 子どもは母親がつきっきりで育てるべきというお説が世に広がり出したのは、『保育園義務教育化』(小学館)によると、3歳児検診が始まった1961年あたりだと言います。「3歳児神話」の大キャンペーンが始まり、子どもの健全な成長のために、幼少期は専業主婦がつきっきりで育児をすべきであると主張されました。

 おそらく、そこへ乗っかるように1979年に登場したのが、小児科医・久徳重盛氏の『母原病(ぼげんびょう)』(サンマーク出版)。「現代の子どもの病気は60%が母原病=母親に原因がある」。そう謳った同書は続編も出版され、シリーズで100万部を超えモンスター級のロングセラーに。しかし現在では、〈母原病は「自分がこう思った」という個人の雑感でしかなく、科学的根拠はない〉と認識されています。

 ところが! 現在の子育て界隈を見ていると、「子どもの病気は母親のせい」という考え方はまだまだバッチリご健在。諸説入り混じっているのでしょうが、その一部は確実に久徳医師が生み出した〈母原病〉が、元ネタであるはずです。

 現在私の手元にあるのは1991年に発行された文庫版。「新しいデータなどを一部だけ差し替えると、かえってアンバランスをもたらす結果になるため、あえて当時のままにとどめました」とのことなので、源流をご紹介するにはありがたい限りです。

 さっそく、そのお説を紹介していきましょう。

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山田ノジル

自然派、エコ、オーガニック、ホリスティック、○○セラピー、お話会。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のないトンデモ健康法をウォッチング中。当サイトmessyの連載「スピリチュアル百鬼夜行」を元にした書籍を、来春発行予定。

twitter:@YamadaNojiru

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