振り返ると、わたしの人生は成人迎えて以降、“ヤリマンだった日々”のほうが圧倒的に長い。
男は性欲を捨てるためのゴミ箱。
かつてはそう思っていたこともあった。
わたしと同じ、血が通った人間であるにもかかわらず、セフレという存在を「便利な便器」扱いしていたのだ。
しかし、そうは言っても時にはセフレに恋したこともあった。
だが、そのせいでとっても痛い思いをしたことも……。
セフレに恋したら、便利な便器が凶器に変わり、ハートがズタズタに切り裂かれた懐かしい話を今回はしよう。
デンマークでセフレに恋をした
舞台は数年前の冬のデンマーク。
デンマークは「イケメン大国」とこっそり呼んでいるくらい、美男子が多い国(美女も)。
当時、風俗嬢だったわたしは長期休暇を取り、親友ヨウコとデンマークに滞在していた。その地でわたしはさまざまなイケメンスカンジナビアのセフレを作り、性生活をエンジョイしていた。
デンマークはまさにおとぎの国で、イケメンとセックスし放題の天国であった(失礼!)。
私はこれまでにアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、マカオ、台湾、中国、オーストリアといろんな海外を訪れたが、その国の中で美男子が多いランキング間違いなく一位がデンマークである。
しかしその地で、わたしが恋に落ちたのはデンマーク人ではなくデンマークの専門学校に通うスェーデン人のヨワキム(仮名)だった。
ヨワキムとは、共通の友人を通じて知り合ったのだが、わたしは一目でヨワキムに恋をした。そしてすぐに親密な関係に発展した。
とはいえ、所詮セフレの関係。わたしはヨワキムの同級生数人とも同時にセフレの関係になっていたし、ヨワキムはヨワキムでわたし以外にもセフレらしい女性がいた。
それでも、ヨワキムを見かけるたびにドキドキした。定期的にヨワキムから連絡があり、ヤるだけの関係だったが、ヨワキムから連絡があると飛び跳ねるように喜んだ。
恋だ。これは恋だ。わたしはヨワキムに恋をしている……。 まだ処女だった中学生の頃にしていた片思いような初々しい甘酸っぱい気持ちを抱いていた。
しかし、ヨワキムの同級生でもある友人には
「ヨワキムは性格が悪いからやめといた方がいい」
と言われていた。それでも、自分の気持ちは冷めるどころか膨らむ一方であった。
生理中だけど、好きだから会いに行く
ある日、ヨワキムから誘いのメッセージが。
「今夜空いてる?」
わたしは友人の忠告を無視して、速攻返信をした。「もちろんYES!!」と。 しかし、わたしはこの日生理だった。生理中はセックスはしない主義だったが、それでもヨワキムに会いたい気持ちが勝ったのである。生理はできなくても、キスやフェラチオをしよう。そう決めていた。 (粘膜の接触は基本恋人としかしないわたしだが、ヨワキムは許せるくらい好きだった)
「Cool! 何かしたいことある?」
すぐさまヨワキムから返信が来た。
どうせセックスしたいだけなのは分かりきっていたが、何気に聞かれたことが嬉しかった。たとえセフレ以上恋人未満だったとしても。
「DVD観たい。オススメのDVD持って行くね!」
わたしはそう返信した。
前回会った時は、「何かしたいことある?」なんて聞かれなかった。 もしかしたら、ヨワキムも少しはわたしのことを……? なぁんて、脳内お花畑状態でヨワキムの家に向かった。まるで好きな人とデートに行く時のように心をときめかせて。
口の中で彼のモノが熱くなるほど、冷めていく想い
ヨワキムの家に着くと、「どこか飲みに行こう」と近所のバーへ連れて行ってくれた。ますますデート気分である。
(生理でも会いに来てよかった)
バーでの会話も盛り上がり、ほろ酔いで気分がよくなった頃、ヨワキムの家へ移動。
すぐさま体を求められるかと思いきや、DVD観ようと言ってくれるヨワキム。時は夜の21時。「もしや初のお泊まりコースでは?」と心が踊った。前までは、ヤッたらとっとと帰る「便利なよきセフレ」だったのに。
わたしがヤッたらすぐ帰るのは、セフレに対して普段からかなり塩対応なのが関係している。家にセフレを招いた側からすれば、ヤったらとっとと帰って欲しい。その後にだらだら会話なんてしたくない。だから、自宅にセフレを招いた時、私は早く帰れオーラを出していた。
しかし、ヨワキムは私にとってもうただのセフレではない。
窓際で揺れるキャンドルの炎に照らされて、一緒に寄り添いDVDを観る。まるで恋人のよう。
わたしが持参したのは『きみに読む物語』。最高に純愛で涙なしでは観られない名作である。ヨワキムもまんざらではなさそうに映画に魅入っていた。
だが、物語が終盤にかかった頃、ヨワキムが突然キスしてきて体を求めてきた。
「あの、今日生理なの」
ヨワキムの手がまんこに忍びこみそうだったので即座に言った。
「まじかよ……」
思いっきり落胆した表情のヨワキムに、私もがっかりした。その瞬間、悟らずにはいられなかった。やっぱりわたしはセフレ以上恋人未満だと。
「あ、じゃあシャワー浴びながらやろうよ」
ヨワキムはどうしてもヤリたいようだ。……どれだけヤりたいんだよ?
「生理中はしんどいから無理」と断ると、案の定フェラチオを要求してきた。
そしてイラマチオさながら激しくわたしの口を使っておちんちんを入れたり出したりする。
く、く、苦しい……!!!
ヨワキムのおちんちんがヒートアップすればするほど、わたしのヨワキムへの恋心は冷めていった。
そしてヨワキムが果てたと同時にわたしも疲れ果て、二人そろって眠りについた。 その後、とんでもない事態が待ち受けているとも知らずに……。
夜中に外に放り出され、とんでもない恐怖を体験する
目が覚めると夜中の二時だった。
わたしが目覚めると、隣で丸裸なまま眠っていたヨワキムも起き出した。とはいえ、まだ夜中なので朝まで一緒に寝るものだと思っていた。
しかし、ヨワキムはこう言ったのである。
「マコ、君は今から帰って」
「え?」
一瞬耳を疑った。 「You have to go home」、確かにヨワキムにそう言われた気がしたが、まさかそんなひどいこと……さすがに空耳だよね? ね?
「マコ、君は帰って。僕は明日、朝からバイトだから」
ヨワキムははっきりと言った。わたしの顔も見ずに。
おいおいおい、夜中の二時やぞ? わしは女とちゃうんか? もはやセフレでも女でもない。
夜中の二時に強制的に家を追い出されたわたしは、ヨワキムのマンションの階段で無気力に座りこんでいた。
マンション内は節約のためか真っ暗で怖かったが、こんな夜中に外を歩く方が怖かった。デンマークの夜は静かで街灯も少なく真っ暗闇に近い(場所によるが)。
電車は無人電車が24時間運行していたが、駅まで歩く10分ほどの道のりが怖いのだ。
しかし、冬の寒さの中、外で朝を待つわけにもいかず、意を決して、真っ暗闇の道を駅に向かって歩きだし、最中にタクシーをつかまえることにした。
さらなる恐怖が待っているとも知らずに。
「~~~まで」
タクシーをつかまえ、家までの住所を伝えた。
運転手は巨体な中東系の男性だった。
「タクシー代、いくらくらいかかりますか?」
念のため、確認した。まさかタクシーで帰るとは思っていなかったため財布の中がギリギリだったのだ。
「150クローネくらいだよ」
よかった、余裕で足りる!と安心した瞬間だった。
「君、となりに来てよ」
タクシー運転手が言う。嫌な予感がした。
「君がとなりに来て僕のおちんちんなめてくれたら、タクシー代いらないよ。それどころかお金あげるよ」
ぞぉぉぉっと青ざめる。
真っ暗闇のデンマークの夜。ヤバイタクシーの運転手と車内で二人きり。
「今すぐここから一番近い駅にとめて」
わたしは叫んだ。
「今電車、工事中で走ってないよ」
運転手はそう言ったが
「いいから止めろよ! すぐに止めなさい!」
怒鳴るようにわたしは叫んだ。
恐ろしかったが、「こんなヤツに襲われてたまるか!」という気持ちが勝った。
とにかくタクシーの中で止めろ止めろと叫び倒すわたしにうんざりしたのか、一番近くの駅で降ろしてくれた。
やっと解放され、安心したが、体は恐怖と冬の寒さで震えていた。
電車は普通に動いていた。タクシーの運転手は嘘をついたのだ。
散々な夜だった。
何はともあれ無事でよかったのだが、セフレに恋すると、このように痛い目を見ることがあるのだと、深く学んだ。わたしの場合はかなり特殊な例ではあるが。
ヨワキム性格悪いからやめといた方がいい。
あの時、友人の忠告を聞き入れてヨワキムと会わなければよかった。そうしたらこんなに怖い目に遭わずに済んだのに・・・。
数日後、ヨワキムから「元気? 今度いつ会える?」と、わたしが生理を終えたのを見計らったかのようにメッセージが来た。
もちろんわたしは既読スルー。
セフレから恋人に発展したことも過去にあったが、セフレみんながみんな、体の相性がいい=心の相性までいいとは限らないのである。
ヨワキムにもし恋をしなかったら、生理の時に会いに行くこともなかったし、お気に入りのDVDを持っていくこともなかったし、ただ毎回ヤって、ヤったら即バイバイの潔い関係でいられたかもしれない。
だけどわたしは後悔していない。 いくらセフレとは言え、夜中に帰れというような最低男とは遊びでも付き合いたくない。
セフレに恋をしたことで最悪な目に遭ったが、すぐに最低男と分かったことは不幸中の幸いだったのかもしれない。