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子宮摘出手術をひとりで受けて、ひとりで退院する。解決すべき課題と医療の進歩

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摘出を控えた子宮にちんぽを届けたくて突っ走ってきた女性が、ついに実感できた愛の画像1

イラスト/大和彩

 前回は夢子がなんとか子宮摘出手術の予約をもぎ取り、それを祝う子宮摘出パーティを開いてもらったところまで語ったな。

 手術すること自体が決まったのはもちろん、病院が決まって俺はホッとした。それさえ決まれば、無駄な悩みが減るからだ。夢子のやつ、手術は怖くないらしいんだが、入院に関しては必要ないことまであれこれ心配していた。

 入院が決まる前から夢子が恐怖していたことの中でも、代表格は”同室の入院患者にいじめられるのではないか”ということだった。夢子は収入が少ないので、一番リーズナブル価格である大部屋に入院する。5人くらいはルームメイトがいるのだろうか? 夢子には恐怖でしかなかった。やつには根拠のない確信があった。

(私は、同室のレディースに、いじめられる)

 入院関連の不安としては、思い悩んでもどうにもならないことNo.1だとわかってはいても、夢子はクヨクヨし続けた。

 夢子はもともと、1日のうち数時間はひとりっきりで過ごさないと情緒不安定になる体質だ。これは鬱とは関係ない。あまり知られていないかもしれないが、そういう体質の人間は社会に一定数、存在する。生まれついた脳の仕組みでそうなるらしい。

 そんな体質の者であっても、人と交流することは可能だ。ただ、夢子は半年に及ぶ病院探しで弱体化していると自覚していた。普段の体質に輪をかけて内向的傾向が強くなっている上に、鬱やパニックが出やすくなっている。それなのに24時間、人間と共同生活が送れるわけがない。この考えはまだ理解できるんだが、一足跳びに「いじめられる」と思ってしまうのはちょっとアレだなぁ。ま、コンディションがよくないってことだな。

快適な入院生活が送れるパジャマとは?

 もう少し具体的な懸案事項もあった。寝間着である。

 入院の時は、看護師さんが患者のケアをしやすいよう前開きのパジャマ、もしくは浴衣のようなものでないといけないという。夢子は前開きのパジャマを持っていない。そういえば、近年そういうタイプのものをあまり見かけない気がする。資金も乏しいことだしネットで安く買おうと、入院先が決まる前からパジャマを検索していた。しかし前開きで低価格なパジャマはほとんどなかった。ボタン代が上乗せされ割高になるからか、安いパジャマは全部スウェットのような形をしている。不況はこんなところにも影響を及ぼすのか。

 ネットショップヘビーユーザーの夢子宅には、頻繁に宅配便配達がある。昨今では、朝早くや寝る間際の配達は珍しくない。そういう場合、ひとり暮らしでは寝間着のまま荷物を受け取ることになる。配達員にパジャマパジャマした格好で応対するのはさすがに気が引けるのだが、お手頃かつ前開きなものは花柄やフリルがついていて「どうも! パジャマのままです!」という主張が強い。

 買ったものを入院の時にだけ着るのは、お金がもったいない。シンプルかつ前開きで安いパジャマはないのか! と探してもシンプルであればあるほど1万円以上する。この現象はパジャマ・パラドックスとでも言うべきか。検索し始めてから4時間くらいは平気で過ぎていた。成果なしである。

手術後にすぐ洗濯できるのか?

 この件はいったん脇に置こうと決めるも、違う心配が立ち上がってくる。ブラジャー問題である。ノーブラのパジャマ姿で洗面所に行く際に、乳首が透けてしまうのはイヤだった。だがせっかくパジャマを前開きにしても、その下に着けているブラが後ろ開きでは意味がない。とすると、ブラも前開きのものを購入するべきか? 恐る恐る検索しても想像通りだ。こちらは軽く1万円くらいはする。気がつくと検索を始めてからすでに6時間くらいは経過していた。

 ダメだこいつ、不安すぎて完全に正気を失っている。Googleは不安を解消してはくれないぞ!

 パジャマ、ブラなどについてひとしきり思いを馳せれば避けて通れないのは、そう、洗濯案件である。仮にパジャマとブラを調達できたとしよう。高額だからそれぞれ1セットのみだ。しかし手術後、出血やその他体液で着ているものは思いのほか汚れるかもしれない。入院は2週間の予定だが、洗濯なしで過ごすのは無理なのでは。

 ご存じの通り、夢子には身寄りがない。洗濯もすべてセルフだ。コインランドリーはあるような気がする。だが、手術後すぐにランドリーする気力が自分にあるだろうか。

(あっても、パジャマ1組と下着だけ洗って乾燥するのはお金がもったいないなぁ。あっ、洗濯中は何を着ればいいの? なるべく出費は減らしたいけど、やっぱ1セットずつじゃ無理……?  ああっ私にお金さえあれば!)

 夢子の悩みは尽きない。そこで気づいたが、自分の不安の本質はパジャマやブラのことではなく、お金のことなのかもしれない。パジャマもブラもこれ以上検索しても仕方ない。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』

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