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LGBTやHIVを描くミュージカル『RENT』の「今日」を大切に生きるというメッセージ

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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像作品では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 年の瀬がせまり、世間はすっかりクリスマスムードになってきました。クリスマスがモチーフとなった舞台作品ももちろん数多くあり、他者に対してだけでなく自分への愛情と慈しみを持って生きる大切さを唱えています。その代表的な作品と言えるのが、クリスマスイブの夜から物語が始まるミュージカル「RENT」。LGBTHIV、若者の失業などを扱い、生きることと愛することを「NO DAY BUT TODAY=今日という日を大切に」というメッセージとともに描いています。

RENT」は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を下敷きに、設定を1990年代末のニューヨークに置き換えたロックミュージカルです。1996年、座席数150あまりのオフブロードウェイの小劇場で初演されると口コミで評判を集め、わずか2カ月でブロードウェイの劇場に移動。その年のトニー賞やピューリッツァー賞を受賞しました。2006年には舞台初演のオリジナルキャスト6人が同役を務めて映画化し、日本でもロングヒットになりました。

当時のアメリカでは不治の病と同義だったHIV

 イーストビレッジの古いロフトに住む若い芸術家たちは、誰もが家賃(RENT)の支払いにも事欠く金欠生活を送っています。クリスマスイブの夜、映像作家の卵のマークは、仲間たちの日常を撮り始めます。

「このシーンからありのままのドキュメントにしよう。現実にフォーカス。ドラマじゃなくて」

 ルームメイトのロジャーは元ロックバンドのボーカル。ロジャーは恋人がエイズの発症を苦に自殺して以来、厭世的になり、死ぬ前に1曲だけでも心揺さぶるメロディを残したいと思い悩んでいるところ、階下に住むドラッグ中毒のSMダンサー・ミミと出会います。

 マークの元恋人でパフォーマンスアーティストのモーリーンは奔放なバイセクシャルで、新しく付き合い始めた相手は女性の弁護士ジョアンヌ。マークたちの親友で哲学者のコリンズは、暴漢に襲われた怪我をストリートドラマーでドラァグクイーンのエンジェルに介抱され、愛し合うようになります。

 「RENT」は、性的マイノリティのありのままの恋愛模様や若いアーティストのボヘミアンな生き方の美学を描くとともに、当時のアメリカでは不治の病と同義だったHIVとの向き合い方も、大きなモチーフになっています。登場人物のうち、ロジャー、ミミ、コリンズ、エンジェルの4人がHIV陽性患者です。

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フィナンシェ西沢

新聞記者、雑誌編集者を経て、現在はお気楽な腰掛け派遣OL兼フリーライター。映画と舞台のパンフレット収集が唯一の趣味。

@westzawa1121

オリジナル・サウンドトラック レント