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恋愛経験少なめセックス多めのヤリマンが、レンタル恋人にハマりかけた話

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(C)緑丘まこ

不特定多数とセックスをしまくっていた頃。

股は開くけど、恋人はいらないと宣言して、やりたいだけなのよ、とアピールをしていた。でも、ふとした瞬間、不安になることがあった。

わたし、このままちんこしか愛せない女になったらどうしよう……。

あの頃のわたしは荒れていた。 道を歩くカップルをみては心の中で「けっ!」と悪態をついたり、ひどい時はカップルのそばですかしっぺをかまして、オナラの匂いだけ残して逃げたこともあった。

世の中のカップルすべてが敵のように思えた。

でも、わたしも恋したい。キュンキュンしたい、と思っていた。

しかし、現実はクラブやバーで出会ったヤリ目の男性とセックスして終わるだけ。後にセフレに発展することはあっても恋人なんてありえない。 私も彼も、ヤったらお腹いっぱいなので、はなから恋愛対象ではないのだ。

男性との出会いがクラブやバーしかなかったわたしが、唯一キュンキュンする瞬間は、少女漫画を読んでいる時だけだ。

もうわたしは生身の男性を愛せないかもしれない。そう本気で思い悩んだ時、“恋人”をレンタルできるサービスが存在することを知った。

レンタルすると1時間単位で数千円の利用料が発生し、交通費やデート中にかかる費用もすべてこちらが支払うが、その代わりに、イケメンが彼氏のふりをしてデートしてくれるのだという。いわば特別な時間をお金で買うのだ。

恋人をレンタルできるサイトをしばらく見つめて、わたしはとうとう決意してしまった。

恋人をレンタルしてドキドキを手に入れよう、と。

三年前の秋のことである。

メールだけで胸キュン

守秘義務があるらしいので、利用したお店やレンタルした恋人の名前はふせるが、わたしが実際に「レンタル恋人」を利用した時の体験談を書こうと思う。

まず、レンタル恋人を利用するにあたって、レンタルしたい恋人を選び、デートをする日を決めなければならなかった。業務的に言うと〈予約〉である。

わたしは、黒髪でモデル風のイケメンA氏を選択。

そして予約完了後、しばらくすると指名したA氏からメールが届いた。

まるで恋愛シュミレーションゲームの始まりである。ときメモでドキドキしまくっていたわたしにはたまらない。

クラブで出会ったセフレとぐだぐだ連絡をとるのは面倒だったのでシカトしていたけど、会ったことのないイケメンとのメールのやりとりは純粋に楽しかった。

もうこの時からレンタル恋人との“なんちゃって恋愛”は始まっていたのだ。

わたしが休日は何をするのかとか、趣味を聞かれるだけでテンションが上がった。

相手は仕事で聞いているだけなのに、自分に興味がある? と本気で錯覚してしまったり。プロだからメールの文章もどこか心惹かれるものなのだ。メールのやりとりをすればするほど、私はA氏に心をわしづかみにされた。

ああ、ドキドキする……。

会う前からドキドキしっぱなしのわたしだったが、とうとうデート当日を迎えた。

レンタルした恋人に壁ドンをおねだり

はりきりすぎて、待ち合わせの駅に一時間前に到着。わたしは極度の緊張屋なので、とりあえず……駅の売店で購入したワインを一気飲み! この状況、酔わなきゃやってられない!

事前に彼とのメールのやり取りで「緊張するのでお酒を飲んでから行ってもいいですか?」と聞いたのだけど、その一文だけは完全にスルーされていた。無言で飲むなって圧力をかけられたのかもしれない。

それでも飲まずにはいられない。酔っ払わないと、これから来るイケメンがまぶしすぎて直視できない!

その想いだけでワインがすすみ、ほどよく酔いがまわった頃だった。

「お待たせ」

待ち合わせの15時より三分早く現れたレンタル恋人のA氏。 ホームページに載せている写真どおりのさわやかイケメンである。

 

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(C)緑丘まこ

「待った?」

A氏が聞く。初対面とは思えない気さくな聞き方で。そう、この瞬間から“恋人ごっこ”は始まっているのだ。

「いえ、待ってないですよ」

気さくなA氏に反し、目も合わせられず、おどおどと答えるわたし。

(怪しー……、絶対私怪しい……)

わたしは、事前にA氏とのメールのやりとりで恋愛経験が少ないことを伝えていた。

実際は、恋愛した経験は少ないが、ヤった男は数え切れないくらい多いヤリマンであったがそれは伏せておいた。 恋愛経験人数が少ないのは、滅多に人を好きにならないからだ。

わたしはおどおどしていたが、A氏は変わり者の女性にも慣れているのか、動じず優しく接してくれた。

わたしの希望で、デートコースは美術館。 最初に美術館を一緒にまわった。この時、わたしが緊張しすぎて、変にA氏と距離をとってしまった……。デートにも関わらず、「一人でゆっくり見るのが好きなんです」風な女を演じて別行動をしてしまったのだ(A氏は無理に近づいてこず、わたしに任せる様子だった)。

この時、正直ちょっとだけレンタル恋人を利用したことを後悔していた。

だって……だって……

やっぱり緊張するんだものー!(涙)

会う直前に飲んだワインの酔いはすぐにさめて、デートを楽しむ余裕もないくらい緊張して地に足がつかない状態のわたし。

そんなわたしと彼の間には、ぽっかり深い溝があるまま時間が過ぎていった。でも、A氏が予約してくれていたオシャレな個室居酒屋に入ると、お酒のおかげでいい感じに酔っぱらっていた。

でも、ちょっと度が過ぎてしまった。

「あー壁ドンしてくれない?」

先ほどまでおどおどしていたわたしではないみたいだ。

壁ドンは、漫画や映画で見て、実はずっと憧れていた。しかし、壁ドンしてよ、なんてお金を払っていたとしても断られるだろうって思っていた。

「いいよ」

A氏はあっさりOKしてくれた。

ドンッ!

「俺のことどう思ってるの?」

少女漫画のような壁ドンを本当にしてくれて、真剣な眼差しで聞いてきた。まさかのセリフ付き&超至近距離である。

酔っ払うまではまぶしすぎて直視できなかったイケメンA氏の顔が、わたしのすぐ目の前に……!!

人生初の壁ドンは予想以上の威力だった。

やべードキドキする(°_°) ときめく!!

その後、個室では何度もわたしの声が響いた。

「もう一回壁ドン!」

「もう一回!」

「もう一回!」

おかわりを求めても嫌な顔を一切せず要望に応えてくれたA氏。セリフまでちゃんと変えてくれる(「他の男もう見るなよ」とか「好きだよ」とか)。

初めてレンタル恋人を利用した日の感想は……。

素晴らしい! 素晴らしすぎる!!

レンタル恋人本当に素晴らしい!!

生きてるって最高!! ときめくって最高!!!!!!!

わたしはこれまでに味わったことのない高揚感を経験した。

でも、これで終わりにすべきだった。夢は夢のままで。

本性を見せたA氏にドン引き

数週間後、A氏の壁ドンが忘れられず、2回目のデートを予約したのだが、結果的にしなければよかったと後悔することになる。

二度目はデート中にA氏の嫌な面が見えてしまい、A氏に魅力を一切感じなくなってしまったのだ。料金もそれなりに高いのに……。

A氏はたまたま機嫌が悪かったのか、その日はあまり笑顔も少なく、自分の客の悪口を延々とわたしに言ってきた。何でお金を払ってまで、人の悪口を聞かなければならないのだろう……。しかも、その悪口の相手が、なかなかの有名人で、A氏が悪口を言えば言うほど彼の口の軽さと器の小ささを感じた。「あのババア、俺のこと指名してくれるんだけど、大嫌いなんだよ。本当あいつ嫌」と愚痴るA氏にわたしはげんなりして、はぁ……と頷くしかなかった。

それでも気を取り直して前回同様、壁ドンをしてもらったが……。

あれ、まったくときめかねー(汗)。

ドキドキしたくて恋人をレンタルしているのに……。

きわめつきは帰り際。事前にレンタル料金と一緒にデート費用も渡していたのだが、お釣りが一万円近くあったのに、「余ったお金で今度プレゼント買ってくるね♫」と勝手に自分の財布へ。前回は「デート費用が余ってもチップとして受けとることはない。あげるって言われても必ず返すようにしている」と誠実さを押し売るように語っていたのに。いや、お釣り返してよ……。わたしのお金勝手に持ち帰って買ったプレゼントって何?

最初で終わりにすべきだった。

大金をはたいて恋人をレンタルしたのに、相手にドキドキする瞬間が一秒もなくなり、ただひたすら客の悪口を聞かされていたわたし。

愚痴りたいなら友達に言え。わたしはあくまで客だ。

A氏にさめた理由がもう一つあった。A氏をサイトの写真を毒舌な友人に見せると

「えっ、馬面やん。どこがイケメンなん?」

そう言われた瞬間、不思議なことにA氏のことをイケメンと思えなくなり、本当に馬面に見えてきてしまったのだ(人は顔じゃない! 顔じゃないけど……)。

友人の毒舌は止まらない。

「はっきり言って、このA氏って人なら、緑丘が前クラブで捕まえてた美容師の子の方が百倍イケメンやで」

ま、まじか……。友人の言葉は時々魔法のような不思議な現象が起こる。 例えば、クラブで「あの人イケメンじゃない?」と自分のイケメンセンサーが反応しても友人が「そうか? 全然やで、よく見てみ」と言うと本当に全然に見えるのだ。

同じ現象で、A氏が馬にしか見えなくなり、正直お金を払うのがばかばかしくなったのもあってリピートするのはやめた。脳内でヒヒーンと馬がむなしく鳴いている。

その後もA氏は営業メールを何度もくれたがすべて無視(ごめんA氏……)。 無視するとそのうち、「僕はまこちゃんが困ってるなら支えてあげたい。まこちゃんには笑顔でいてほしいんだ」と熱いポエムのようなメールが届いたが、感動するどころか背筋が凍った。

そもそもこれ以上レンタルするお金がなかった。しかし、はまっていたらきっとレンタルする費用を稼ぐべく、バイトをいくつもかけもちしていただろう。ホストに貢ぐホス狂いみたいに。

わたしは友人の言葉に左右されて情けないとも思ったが、その反面、感謝もしていた。

これでもうレンタル恋人に大金をつかわなくて済む!!

ひとつ言えるのは、レンタル恋人ではなく、本当に本気で恋した相手なら誰に貶されようが、毒を吐かれようが好きという気持ちは変わらないだろう。たとえ友人の言葉の威力にも負けないだろう。 そして大好きで仕方ない今の彼氏、サトル君がもし醜くなっても、私の気持ちは変わらない。絶対に。

ハマる人はハマりそうな恋人レンタル

ここまで書くと、レンタル恋人のサービスを全否定しているように見えるかもしれないが、全体的な感想として、(二度目のデートは後悔したが)このサービスを利用したこと自体はよかったとは思える。

初めて壁ドンをされた時のときめきは本物だったし、一瞬でも久々に男性と疑似恋愛できて楽しかった。

ハマる人はハマるだろうな、と思う。

お金を払えば若いイケメンと恋人のようにデートできるのだから、夢のようなサービスだろう。

ただ、わたしのようにリピートしない客もいるだろう。相手はコンピューターではなく生身の人間で相性が合う・合わないがあるのだから。

わたしは時々思い出す。

人生で初めて壁ドンをしてもらった時のA氏がわたしを見つめる眼差しも、恋人のふりをして優しく笑いかけてくれたA氏の笑顔も。

思い出の中のA氏は輝いている。

わたしは一瞬でも、あの瞬間A氏に心を奪われのだ。

緑丘まこ

兵庫県育ちのアラサー女。
漫画とゲームとオナニーをこよなく愛する。
センベロ居酒屋やレトロなレストランを発掘するのが休日の楽しみである。

@makoishappy777

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