連載

本の交換はココロの交歓⁉ 舌触りまったり「あん肝ポン酢」に寄せて

【この記事のキーワード】

kazuyosan1203top

こんにちは。
寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか?

今日の一品は「あん肝ポン酢」でございます。

あん肝ポン酢。美味しいですね。
舌触りはまったり。味はポン酢でキリッと。
大好きな冬の味覚です。
「大好きな」とは言ってもあん肝を頻繁に食べるというよりは、
昔のバイト先で数回食べさせてもらった時の記憶が鮮やかに残っているという感じです。

それで思い出すと時々食べたくなるのですが、店で頼むとやや高いし自分で作れたらいいな……と思っていました。

年も明けたある寒い日に、ふと「あっ、あん肝ポン酢を作ろう!!」と思いました。
冬だし、あん肝が手に入りやすいかも? と。
……そして……スーパーへ行ってみたらありました!!
「!!」マークなんてつけましたが、昨年春に探した時には振られてばかりいたので嬉しさもひとしおだったのです。
そりゃ探したのが春だったからだろ? と言われたらぐうの音も出ませんがよ……。
ともかく入手できました。
「中国産ですけど……」と鮮魚コーナーのおじさんが申し訳なさそうに言いましたが、そんなことは良いのです。
「今日は”とびきりの”あん肝が入りましたよ~?」と言われたら不安だわ。

あん肝だからと言って必ずしも高価とは限らないんですね。
私の思い込みだったのか……
あん肝は思ったよりも安く入手できるけど、運なのかも知れないなと思いました。

さて。

今回お送りするお喋りは、「本の交換」にまつわるエピソードです。
みなさんは友達と本の貸し借りってしますか?
お互いに貸し借りをすれば本を買わずに楽しめますね。

しかし、本の貸し借りという行為に対して気恥ずかしさを覚えてしまった出来事がありましてよ。
なんか……その……過剰反応してしまったのです。
「本の交換」って凄いことだぞ!? と思ったのです。
本の交換……それは……。

 

(ハープの音)

 

~回想~

ある日のとあるパート先でのこと。
8つくらい年下Sくんと、8つくらい年上の子持ち主婦Kさんと私の3人で休憩しておりました。

最近読んでいる本の話になり。
二人はあれやこれやと自分の好きな本について語っていましたが、私はあまり本を読んでいませんでした。
本を買うと当然ですがお金がかかります。
本好きな人がこれを聞いたら「ケチな……本くらい買えよ」と思うでしょうね。
その通りよ!

……すると、お互い持っている本を交換しようということになりました。
なるほど。

数日後、私の数少ない手持ちの本を渡しました。
『幻獣 ムベンベを追え』(高野秀行著)です。
アフリカはコンゴにいると言われているモケーレ・ムベンベという怪獣を探して本当に出かけてしまうという冒険記です。
旅のリーダーでもある著者の高野さんは、最初は周りの人達にバカにされます。
しかし周囲を説き伏せ、フランス語を覚え、現地語を覚え、現地へ下見に行って知り合いを作り、スポンサーや機材や旅するメンバーを得て旅立つのです。
友と力を合わせて武器(?)や金を得て旅に出るなんてRPGだわ。演じるどころかリアルだし。
きっと楽しんでもらえるはずという自信を持ってSくんに本を渡しました。

さらに数日後、今度はSくんが本を持ってきてくれました。タイトルも著者も忘れました。
美人科学研究者と小太りでちょっとオタクな主人公研究者くんの物語。
人間の頭部に仕込むと、意識が混濁して現実世界と幻の世界をさまよってしまうという特殊な薬剤があり、その薬剤をめぐって悪巧み組織との攻防……という話だったかと思います。
薬剤ではなくて何かシート状の機械だったような気もします。
おぼろげ過ぎてごめんなさい……。
とにかく「人間の頭部に仕込むと、意識が混濁して現実世界と幻の世界をさまよってしまう特殊な何か」です!

サイドストーリーとして研究者くんの恋心が描かれていました。

……あ……甘酸っぱい……

『Boys Be……』という少年漫画を思い出しました。
大学時代の記憶です。男子学生が買ってきた漫画がその辺に転がっていたので、結構読めたのです。
オムニバス・ラブストーリー少年目線版といったところでしょうか。
びっくりするくらいハッピーエンド!
線が太くて効果音の多い、戦ったり殺したり試合をしたりする話の多い少年漫画連載誌の中で異彩を放っていました。

男の子の恋心と、それに気付いて応える女の子のアプローチ。
女の子のアプローチ。
2回言いました。
もっと言うと、シャイな男の子にとって都合の良いアプローチ。
男の子は自分で狩りに行きたいもんだと思っていたので、こういう願望もあったのか!! と驚きました。
さらにそれが少年漫画として掲載されていたことにも驚きました。

Sくんが持ってきてくれた本では、研究者くんの恋が実る予感を漂わせて話が終わったような気がします。

Sくん本人は小太りでもオタクでもありません。
賢く、ムカつくくらいスマートに仕事をこなす人でした。お顔立ちも悪くありません。
そんな人がこんな甘酸っぱい本を買って読んでいたのかと思ったら、何だか萌えました。(萌えるってもう古いかね)

本を読んだ後……ある夜のことです。
Sくんに切なくキスをせがまれるという夢と、母に髪を掴まれて顔面を柱にガンガン打ちつけられて血だらけになるという夢を2本立てで見ました。

「うわああああああ~!!」

自分の声で目覚めました。
なんなんだ今のは……。

夢の中にいる間は、口の中で血の味がしたように思います。
しばらく口の中を舐めても血の味がしなくなって「あ……夢だった」と目覚めました。

それから私はSくんに対して猛烈に意識し始めてしまい、「ダメよダメダメ!! 手出ししたら犯罪よ!!」と思い、挙動不審になってしまいました。

Sくんに借りた本の感想を聞かれ、
「シャイな男の人の願望が書かれてるな~って思いました。『Boys Be……』という漫画を思い出してですね云々……」
と言いました。感じ悪いですね。
でも。
「Sくんがこんな本を読むなんて意外!! 萌えました~!!」なんて言えません。絶対に!!
ましてやSくんにキスをねだられる夢を見たなんて言えません。絶対に!!

……数日後。

子持ち主婦Kさんが本を持ってきて下さいました。

アメリカ女性捜査官の仕事と恋が描かれており、大人の官能(湯気)といった感じでありました。
官能的な部分がきちんと描かれていたため、これをKさんが読んでいるのかと思ったらちょっと生々しくてクラクラしました。
また、仕事の活躍ぶりが丁寧に描かれている分、官能的な部分も際立つというか、何と言うか全てにおいて濃い印象がありました。
若者の淡い恋心なんて吹けば飛ぶような濃密さよ……。

(はっ)

ねえ……本だよ。本。あくまで本!!
いろんな本が読みたいでしょうよ。硬い本からスケベな本まで。
持っている人と本の内容を変に結びつけてクラクラしたり、挙動不審になってんじゃないよ!!

 

(波濤)(波濤)(波濤)(波濤)ザッパーン(波濤)(波濤)(波濤)(波濤)

 

Kさんが本を持ってきて下さったことで我に返り、Sくんへの挙動不審な振る舞いはまあまあ治まりました。
しかしですよ。
本の交換ってなんてえろいんでしょう……。
だってその人が読んだものを共有するんですよ!?

SくんもKさんも、普段話題にしない恋が盛り込まれた本を持ってきました。
本は本ですし、気持ちを寄り添わせようとするのは本の中の登場人物に対してです。
一方で、本を借りることによって持ち主への視線も生まれます。
一体この場面をSくんは、Kさんは、どんな気持ちで読んだんだろう……。

声に出して直接その場面について話さなくても、同じ風景や登場人物の心情を共有しているのです。
何でもない情景の積み重なりさえも共有しているのです!!
そのことが、お互いの心のひだの奥に触れ合っているような気がしてですね……。

「共有するなら、一緒に映画を見に行くことも同じじゃない?」と一瞬思いましたが、
同じ空間で一緒に映画を見るよりも、違う時間・違う場所で同じ本を交換して読む方が断然えろいと思いました。
そっけなくサラサラとした付き合いに端から見えて、でも、同じ風景や心情を心の片隅で共有している……。 
えろい……。
挙動不審になるくらいそう思いました。

今思うと「バーカバーカ!!」ですし、読書量が少ないからいちいち過剰に反応していたのかも知れないなと思います。
それでもやっぱり本の交換ってちょっとドキドキする気がします。
今後誰かと本の交換をするとしたら、
「いちいち挙動不審になるんじゃねえぞ!? いいな?」と自分に言い聞かせることでしょう。

本の交換のえろさと、あん肝のまったりした舌触り……
何か通じるものを感じた次第でございます。

それでは参りましょう。
冬の味覚「あん肝ポン酢」。

1 2 3

自意識和代

人の好意をなかなか信じられず、褒め言葉はとりあえず疑ってかかる。逆にけなし言葉をかけられて「なんて率直なんだ!」と心を開くことがある。社交辞令より愛あるdis。愛がなければただのdis。凹んじゃうよ! ラブリーかつ面倒なアラフォーかまってちゃんである。

[PR]
[PR]

messy新着記事一覧へ

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)