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奔放人生の宇野千代に倣う、アクを抜かない「揚げゴボウ入り肉じゃが」

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こんにちは。
自意識和代でございます。

記憶の断片。

ある日、料理番組を見ていたら、野菜のアクを抜かずに調理している様子が映っていました。
すかさず視聴者から「アクは抜かないんですか?」とツッコミFAXが。
料理人はちょっとムッとした様子で「旬の野菜ならアクは抜かなくても大丈夫です」と言っていました。

アクを抜かない……

ふと宇野千代のエッセイを思い出しました。
エッセイの中で野菜のアク抜きについて書いてあったような……。

何がきっかけで本を手に取ったのかは忘れてしまいました。初めて読んだのは随分昔のことです。
宇野千代は『おはん』『色ざんげ』の代表作で知られる小説家(1897~1996)ですが、私が先に触れたのはエッセイでした。
なので、私にとっては「男性遍歴が華やかで、麻雀が強くて、野菜のアクを抜かない人」でした。
その中でも特に「野菜のアクは抜かない。抜いてなるものか!!」とでも言いそうな、鼻息まじりの主張を不意に思い出したのです。

それで、エッセイに出てきたゴボウの煮物を食べたくなってAmazonで本を注文しました。
『私の長生き料理』……これかな?……ポチっとな。

ところが。
その本のレシピには『ゴボウは水にさらし、下茹でしておきます』との言葉。
はい!?
野菜のアクを抜かない・下茹でしないのがポリシーじゃなかったのか!?
もしかしてこれは晩年世話をしていた人たちが気を利かせてアクを抜くってことにして書いたんじゃないか?
それに、私が見た本では肉と一緒に煮たと書いてあったはず。
『乾物と根菜の煮物』……ゴボウは入っているけど違う。
とにかく、この本じゃない!!
アクを抜かないゴボウと牛肉を煮る話、麻雀の話が書いてある本よ!!

本屋へ寄りました。
最初っからそうすれば良かったですね。立ち読みして中を確かめられるんですから。
……発見。
探していた本のタイトルは『行動することが生きることである』でした。
やはり宇野千代は、見事にアク抜き反対派でした。
『私は野菜を煮るのに、あく抜きすると言って、ながい間、水につけておいたり、柔らかくすると言って、ながいこと、鍋の中でことこと茹でて、その茹でた水を捨てたりすることは決してありません。(略)野菜のほんとうの旨味が抜けて了います』(原文ママ)
ほーら見ろ。水にさらし、下茹でだと!?
そんなことするわけないだろ!!

とは言え、もともと私は野菜のアクは抜くほうでした。
(正確に言うとアク抜きをサボらないようになりました)
エッセイは好きでしたが、読んだ当時は「昔ながらの頑固者が何か言ってる」くらいに思って、アク抜きの箇所を特に気にも留めずにいました。
しかし最近になってそのエッセイのことを思い出してみると、
奔放に生きた女性が野菜をアクを抜かずに摂っていたんだなと思ったら「それ、いいな」と思えたのです。
「私アク強めですけど、何か問題でも?」

若いころ、マントを翻して町を闊歩していたとか。
知り合った男性宅を訪問してそのまま同棲が始まってしまうとか。
それを契機に前の夫と離婚とか。
男に尽くし過ぎて却って相手の首を絞めてしまうようなところとか。
突然別れ話を切り出されても「好いわよ」と即答し、一切すがらず自分の気持ちを強引に引き剥がして断ち切るところとか。
「もう家は建てない」と思いつつ結局、家を13軒も建ててしまったとか。
80歳過ぎて徹夜で麻雀をする、とか。
何をするにも考えるより先に体が動いてしまうとか。
生命力がマグマみたいにふつふつしていたんでしょうね。

『人間というものは、次々に死んで行く。私もやがて死んで行くに違いないが、おかしいことに、私は自分がやがては死んで行く、と思ったことが一度もない』(原文ママ)

(波濤)(波濤)(波濤)(波濤)ザッパ~ン(波濤)(波濤)(波濤)(波濤)

ああ、レシピレシピ。
ええと。すき焼きみたいな感じじゃなかったっけか……?
どれどれ……

『あくの強い牛蒡をただ皮を剥いただけで適当な大きさに切り、さっと水洗いしたものを、ふきんで丁寧に水気を取ります。そして、サラダオイルでから揚げしたものを鍋の中にとり、その上から、かつを節でとっただし汁をたっぷり入れ、砂糖、醤油、酒、化学調味料を加えた煮汁を牛蒡のから揚げにした上に、三センチくらいかぶるほどになった、たっぷりした煮汁の中に、百グラム千二、三百円くらいの上等の牛肉を…』(原文ママ)

……100gで1200~1300円の上等な牛肉ってどこで買うんだよ!
かと言ってデパ地下ガールに「ココでぇ~す♡」と言われたら飛び蹴りをお見舞いしてしまいそうです。
う~ん。
主役はゴボウか……少なくともアクを抜かないゴボウが入っていればいいよな。

うむ! では、肉じゃがにしてみようかの。

~試食~

ゴボウのアクの強さに張り合える脂と味を。
ここのバランスが取れると美味です。
ゴボウらしい香りが立ち上がり、鼻に抜けます。
ゴクンと飲み込むと、体の底から力が湧いてくるように感じます。
THE・生命力!

ただし、
あっさりした赤身の牛肉だったり、薄味だったりすると、ゴボウのアクが目立って舌に残ります。
そんな時ゴボウは、牛肉に「あなたじゃ物足りないわ」と言っているように思えます。
ゴボウのアクに張り合える脂と味を!!(2回目)
アクがあるくせに選り好み。
いや、アクがあるから選り好みするんだわ!
……扱いづらい女みたいね。
なんつって。

まあ。でも。
アクに慣れたら却ってクセになるかもしれませんぜ?

では参りましょうか。
「揚げゴボウ入り肉じゃが」

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自意識和代

人の好意をなかなか信じられず、褒め言葉はとりあえず疑ってかかる。逆にけなし言葉をかけられて「なんて率直なんだ!」と心を開くことがある。社交辞令より愛あるdis。愛がなければただのdis。凹んじゃうよ! ラブリーかつ面倒なアラフォーかまってちゃんである。

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