ゴシップ

浅田真央のSPに見る、フィギュアスケーターたちの氷上の思念

【この記事のキーワード】
[PR]
[PR]
『Sports Graphic Number 2014年 2/13号 』文藝春秋

『Sports Graphic Number 2014年 2/13号 』文藝春秋

 うわーん、真央ちゃん!

 という思いで見終わった、ソチオリンピック、浅田真央選手のショートプログラムの演技。しかしそこから一転、浅田選手は翌日のフリープログラムでは16位から6位へ一気に駆け上がるという素晴らしい快進撃を見せてくれた。ひとつのプログラム内に8回、3回転以上のジャンプを着氷させるという怒涛の演技を見せてもらい、私は再び思ったのでした。

 うわーん、真央ちゃん!

 今度は感動の涙でした。今回のオリンピック、私にとっては浅田選手の精神力がいかに強靭かを再認識した女子フィギュアスケート観戦でした。

 浅田真央選手は、彼女がまだあどけない15歳だったころから私のハートの特別な位置に存在するスポーツ選手なのです。ソチオリンピックでは男子フィギュアも素晴らしかったわけですが、やっぱり私は女子フィギュアびいきでして、もう、これはどうしようもないんです。私は、どの選手よりも浅田選手を応援していて、ソチオリンピックでは女子フィギュアというより、浅田選手のスケーティングを見るのを一番楽しみにしていました。

 女子フィギュアスケートを観戦するにあたって、少しでもフィギュアスケートの採点法に詳しくなりたいと思い、荒川静香さんの『誰も語らなかった 知って感じるフィギュアスケート観戦術(以下:知って感じるフィギュアスケート観戦術)』(朝日新聞出版)を読み終わり、私なりに万全を期して浅田選手の演技を待ちました。

 ところが浅田選手のショートプログラムを見終わった感想は、ど素人が非常に僭越ながら、「一体何が起こったんだろう……?」というものでした。それは、ショートプログラムでの順位がまさかの16位だったからではありません。浅田選手が、ジャンプコンビネーション(規定として絶対に跳ばなくてはならない)を跳ばずに、3つ目のジャンプとして2回転ループだけを跳んだからです。

 ショートプログラムでは3回ジャンプ(アクセルジャンプ、ステップからのジャンプ、ジャンプコンビネーション)を跳ぶ規定となっています。浅田選手は最初の2つのジャンプとして、トリプルアクセルと3回転フリップを跳びました。そして、予定では、3つ目のジャンプはジャンプコンビネーションの規定を満たす「3回転ループ-2回転ループ」。それを、浅田選手は、なぜか、ジャンプコンビネーションではない2回転ループにしたのです。

 演技を終えた浅田選手は、顔が真っ青でした。見ていて胸がキリキリしました。

 インタビューでは、「まだ何もわからないです」「自分の体と考えが違ってしまった」などとコメントしていました。たった1人であんな大勢の人の前で戦った直後、不本意な結果に終わっても礼儀正しくインタビューに答える健気な浅田選手を見て胸が痛みました。

 「自分の体と考えが違ってしまった」ということは、頭ではコンビネーションジャンプを跳ぼう、と考えていたにも関わらず、なぜか体が動かなかった、ということなのでしょうか。頭でやろうとしていたことがなぜか体に伝達されないのは、想像するだけでもすごく歯がゆく、悔しいことに違いありません。

 けれど、オリンピックレベルのアスリートが、ルール上必要なジャンプを抜かしてしまうなんてこと、あるんだろうか……? と思いきや、これが、案外あるみたいなんです。

 『知って感じるフィギュアスケート観戦術』では、荒川静香さんが演技中、その時回っていたスピンにどうやって入ったかわからなくなってしまった時のことが書かれています。

「(トリノ五輪シーズンの全日本選手権の)FSの最中、演技で先の技のことを考えながら滑っているうちに、今回っているスピンでどのような入り方をしたか、わからなくなってしまったのです。その試合では前半に3+3(3回転+3回転、以下3+3)のコンビネーションジャンプを入れることができなくて、後半のどこで入れようかとずっと考えながら滑っていたのです。気がついたら無意識で入ったスピンを回りながら、自分がスピンにフライングで入ったか、バックエントランスで入ったのか、覚えていませんでした。フライングスピンは必ず一回いれなくてはならないというルールがありましたから、もしここでやっていないとすれば、最後のスピンはフライングから入らなくてはならない。」(原文ママ)

 さらに男子フィギュアスケート選手、トリノオリンピックの金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコの、こんなエピソードも。

「(プルシェンコ選手は)バンクーバーオリンピックでは、ケアレスミスで負けてしまいました。ルール上、もう一つ跳ぶことができたダブルジャンプを一つ抜いて、その差で負けてしまった」(原文ママ)

 上記を読むと、フィギュアスケートの演技中、選手は本当にいろいろなことを考えながら滑っていて、体だけでなく、頭もフル回転させながら演技をしているのだなぁ、ということがわかります。オリンピックで金メダルを取ったことのある人でも、演技中のルールで必要な要素を忘れてしまったり、ジャンプを抜かしてしまったりすることがあるのですね。

 さて、浅田選手のショートプログラムの後、私は勝手にオロオロしていました。翌日のフリープログラムのために起き上がるのでさえ大変なのではないか、と。

 けれども、十代のころから世界を相手に戦ってきた浅田選手には、そんな心配、一切必要なかった。浅田選手は、トリプルアクセル含む6種類の3回転ジャンプを8回跳ぶという、女子史上初の構成をフリープログラムでは見事成功させたのでした。

 荒川静香さんもこう書いています。

「佐藤コーチのもとで基礎からトレーニングをしなおして、その結果がきちんと毎年彼女の演技に出てきています。具体的にどういう技ができるようになったということよりも、苦手だったものも克服して全体的にレベルアップしてきています。…略…すべての技で勝負ができる選手に成長してきた彼女が、どのように2度目のオリンピックを戦うのか、楽しみです。」(原文ママ)

 「全体的なレベルアップ」とは、浅田選手のメディア対応技術にまで及んでいると思われます。森元首相は浅田選手に対して「大事な時には必ず転ぶ」という、発言の一部を抜粋され、とんでもない発言をしたと話題になりました。それに対する「ああいう発言をしてしまったことについて、森元首相は少し後悔をしているのでは」という帰国後のコメントからも、再度、「浅田選手は本当に強いなぁ」と実感させられました。

スポーツの結果にその日の機嫌が左右される野球ファンのおじさんを私はこれまで冷ややかな目でしか見ることができませんでしたが、自分もスポーツの結果に嬉しくなったり悲しくなったりできるんだ! というのは2014年、新たな発見でした。浅田真央選手、ありがとう。

 ■歯グキ露出狂/ テレビを持っていた頃も、観るのは朝の天気予報くらい、ということから推察されるように、あまりテレビとは良好な関係を築けていなかったが、地デジ化以降、それすらも放棄。テレビを所有しないまま、2年が過ぎた。2013年8月、仕事の為ようやくテレビを導入した。

大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』

コメントを残す

※空欄でも投稿できます

※誹謗中傷、差別的なコメント、プライバシー・著作権侵害などの違法性の高いコメント、宣伝コメントなどについては編集部判断で予告なく削除・非表示にする場合がございます。


+ 六 = 14

関連記事
最新記事

messy新着記事一覧へ

誰も語らなかった 知って感じるフィギュアスケート観戦術 (朝日新書)