前編はこちらから
1週間以上、風呂に入らない妻・ツヤ子。アイマスクの代わりに妻のブラジャーを目の上に載せて就寝する夫・オス彦さん。雑誌に出てくるようなステキ系の結婚生活とはかけ離れているけれど、でも……実はこっちのほうが楽しそうじゃない!? 第一、自分に無理がなくてラクだし! というエピソードが満載のコミックエッセイ『奥サマのほそ道』。
前編では著者の腹肉ツヤ子さんに、第一印象がまったくよろしくなかった初対面から、「あの人気サイトが夫婦仲をよくする」という驚愕の秘訣までをうかがいましたが、今回はまず、他人にはちょっと話しにくい夫婦の危機について掘り下げさせていただきます!
――数年間の交際を経て結婚、というパターンだとそれなりにお互いのことを知っていると思いますが、交際半年でのスピード婚となると、後で意外な面が見えてきて、「あれ、こんな人だったの!?」と引いちゃうことってなかったですか?
腹肉ツヤ子さん(以下、ツ)「あったあった。向こうは40代も半ばを越しているから、もう性格を変えられないのはわかっているけど、ときどき心が折れそうになることも……。たとえば、オス彦さんがシャツの胸ポケットにボールペンを挿したまま洗濯しちゃったことがあるの。私がプレゼントしたシャツだったから、大きなシミがいくつも付いただけでもショックだったのに、『シミ抜いたら、また着られるかなぁ』って言ったら、『もう捨てればいいじゃん』って」
――え!? それは怒って当然ですよ。
ツ「でしょ! しかも1回ぐらいしか着てないのに。でも彼はそもそも、いただきものに思い入れが一切なくて、もらったことすらすぐ忘れる。だから私ひとりで必死になってシミ抜きしたけど、どうにも落ちないからクリーニングに持っていったら、特殊クリーニングで2,500円もかかって、またショック。さらに、帰ってから『この代金はもらうからね』『なんで俺が払わなきゃいけないの?』ってやり取りが……」
――おっと、謝るどころか逆ギレですか。なるほどそういう価値観のズレはあるわけですね。
新婚早々ゴミ屋敷…
ツ「モノにこだわらない人かと思いきや、一方でモノを捨てられない人でもあるの。新居へ引っ越すとき、私は単身者用の引っ越しパックで足りたけど、向こうは3トントラックにも入りきらなくて、さらにレンタカーで2往復。何をそんなに持ってきたのかと思ったら……ゴミなの!」
――それは、腹肉さんの目にはゴミにしか見えないものってこと?
ツ「ううん、そういう比喩的な意味じゃなくて、まぎれもなくゴミ。食べさしのお菓子とか、コンビニ弁当の容器とかも捨てられなくて、何年もかけて溜めたゴミをぜ~んぶ新居に持ってきちゃったの。引っ越して最初の1週間で、大きなサイズのゴミ袋70個分も捨てたよ。まずダンボールをひとつ開けたら、そこにすべて種類のゴミが万遍なく入ってる。割れた板きれとか……」
――日常生活で板きれって、そうそう使わなくないですか?
ツ「うん、本人も何に使ったか忘れてる。それどころか、ダンボールに入りきらなくて、袋に入れて持ってきたものもあるんだけど、分別しようと思ってヨイショって持ち上げたら、袋が破けて、そこから割れた板ガラスが……
――危ないじゃないですか。ケガしませんでした?
ツ「それは大丈夫だったんだけど、そこから砂がざらざらざらざらって出てきたの。私、思わず固まっちゃった。でもさらに続いて、虫がゾロゾロゾロゾロ……って」
――ひ~っ!!
ツ「そのとき初めて『私、なんでこの人と結婚することにしたんだろ?』って思った。私が昼間に自分の仕事をして、夜になったらゴミの分別をして、夜中にゴミを出して……ってしているのに、オス彦さんは時間があると遊びにいくもんだから、もうノイローゼ寸前でした」
――それを乗り越えたっていうのがスゴイです。
ツ「基本は仲良しだから、自分ではいい結婚したなぁって実感があるし、ありがたいなぁと思うこともしょっちゅう。いちばんは、私、最近セックスが面倒で……。途中で寝ちゃうの」
――今度は腹肉さんがひどいっていうターンだ(笑)。
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