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清楚な暮らしは金がかかる。ケチ旦那の自己主張に失笑

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Photo by lawendula from Flickr

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 かつて「火事と喧嘩は江戸の花」と言われた時代もありましたが、これは現代のインターネット事情にも当てはまる話です。「火事(炎上)」と「喧嘩(論争)」はインターネットの花。最も活気のある火事場・喧嘩場として「発言小町」(YOMIURI ONLINE)が真っ先に思い浮かびますが、この「発言小町」とはまた違った味わいの案件を提供してくれるのが、株式会社はてなの「はてな匿名ダイアリー(通称:増田、anonymous diaryから由来)」でしょう。

 発言小町には「質問に見せかけた自己主張」が乱立していますが、ユーザーが匿名でブログ記事を書ける増田には、小町以上の自己主張と自分語りが乱れ咲きます。時折泣かせてくれる記事もありながら、基本的には「チラ裏(=チラシの裏にでも書いておけ)」な薄気味悪い自意識が垂れ流しになっているので、ウォッチャー的にはたまらないサービスです。そうしたチラ裏案件でもスルーされずに、全力で叩かれているのが匿名サービスの怖さでしょうか。

 先日はこんな記事が盛り上がっていました。

「地味清楚系だと思って結婚した嫁の金遣いが荒かった」

 既婚男性によって書かれたこの記事は「黒髪で清楚、堅実な女性と結婚したと思ったら、実は金遣いが荒くて騙された気分だ!」という愚痴です。茶髪ではなく黒髪、ブランド品には見えない清楚な服装、暮らしぶりも質素そうだったのに、結婚して分かったのは彼女の黒髪が毎月15,000円もかけてカットとトリートメントされたもので、清楚な服も実はブランド品で、質素な生活ぶりは高いオーガニック石鹸やら高級タオルで彩られたものだった! 経済観念がまったくあわない! と言うわけです。

 これに対して「ケチ臭すぎる」など男性へのバッシングが大量に沸き、ネット上では妻擁護派が多数派だったようです。かくいう私も「最近はものを買う時、いちいち喧嘩が絶えない」という書き手の男性にはまったく共感できず「え、勝手に『清楚』とか『質素』とか決めつけて『騙された』ってどういうこと?」と思ってしまいました。この妻、典型的な「丁寧な暮らし」系ですよね。で、そういう生活にどういうコストがかかるのか全く知らないで、勝手に「質素」と思い込んだあげく、逆ギレ、みたいな話ですよね。

 男性は「そんな事言う俺は、とにかく何でも節約するタイプ。食品でも家具でも何でも、一円でも安くすませたい派だ。安いのが一番、品質が伴っていれば最高。という考え。粗悪品は別だが、どんなものも日本製ならそれなりに良いと思っている。髪だって千円カット最高!と思っているし」と言い、妻とはまったく価値観が違っています。男性の価値観は「年収300万円でも豊かに暮らせる」というもので、森永卓郎さんの超絶不健康そうな顔色を想起せずにはいられません。

 こういう男は「品質が伴っていれば最高」と言いつつ、絶対、ラーメン二郎とか大勝軒とか量で品質という観念自体を破壊するものが大好きに決まっています(まったく根拠なし。ただし、森永卓郎さんは牛丼大好きとのこと)。一生この夫婦の価値観に折り合いがつくことはないと思いますので、悪いことは言いませんから早めにお別れしておいたほうが良いと思います。男性も貯め込んでたお金を離婚時に持っていかれたら納得いかないでしょうしねえ……。

 この男性のような節約家も、デフレ経済下なら魅力があったかもしれません。なぜならデフレ時には物価が下がっていくため、相対的にお金の価値が上がります。つまりはお金を使わずに取っておいた方が得!(だから消費が進まず、さらに不景気が加速する)ということが言えたからです。

 しかし、アベノミクス効果によってデフレ脱却するかしないか、という昨今、目前に迫った消費税増税のほかに、政策としてインフレ目標が設定されている状況下では、逆にお金の価値が目減りしていくのがトレンドです。持っていても価値が減るだけなら、投資にまわしたり、消費したほうが賢い選択なのですから、チマチマ節約している男なんか流行じゃないわけです! 時代は消費、丁寧な生活万歳!!

 ……と、よくわからない方面に話が飛びましたが、「この男性が考える『清楚』ってどんな女性なのだろう……」という部分も気になります。清楚系というキーワードは昨今の女性ファッション誌などでもにわかに流行の兆しが見られます(当連載でも『Popteen』の清楚化に言及していました)。しかし、もちろん、この男性がPopモデルを想定して「清楚」という言葉を用いていたわけではないでしょう。たぶん、モノトーンで布が過度にヒラヒラしていないシンプルなワンピースとか着ているのを「清楚」と呼んでいるのでしょう。女子アナが着ているようなパステルカラーのツインニットにスカート、ヘアアイロンでセットされた髪は、たとえ清潔感があってもこの男性的にはNGなのでしょうね。

 参考までに「【女子アナファッション】清楚な女子アナ、女優の洋服画像 コーディネート」というまとめを見ておきましょう。ここにまとめられている女子アナたちは、私には一見清楚に見えるのですが(どことなく野暮ったい感じもありますが……)、しかし、同じコーディネートが『CanCam』や『AneCan』に掲載されていた場合、男性は「清楚」とは呼ばず「金のかかりそうな女」と見るのではないでしょうか。しかし、「ファッションモデルや『CanCam』読モよりも、女子アナの方が清楚」ということは決してありません。それどころか、どちらもそれなりにビッチ。ということは? 結局、男性には「その女性が清楚であるかどうか」の本当のところなど、わからないのです。そもそも「清楚」なんてものは個々人の抱く概念、イメージでしかありません。正体のない「清楚な女性」という概念にとらわれ、イメージ先行で結婚に至り、挙句に増田で愚痴を垂れ流すこの男性には「お気の毒様」としかかける言葉が見つかりませんね。

 ひとつだけ言えるのは、「清潔に生きていくには、それなりの経費がかかる」ということぐらいです。何も手入れしていない黒髪(美容院は1,000円カット)が艶やかで美しかったり、何も手入れしていないお肌が玉のように美しかったり、何も気にかけていない服装が毛玉もなくさっぱりと美しかったりするならば、その女性はよしながふみのマンガに出てきかねない稀有な「天然美女」ですから、ケチなデフレ男が結婚できるような相手ではなかったかもしれません。

■カエターノ・武野・コインブラ /80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra

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