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感情の凍結解除…鬱な私が猫のボランティア説明会に行ってみた!

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Photo by Cuba Gallery from Flickr

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短気集中連載『猫と鬱』

 人生に、立て続けに無力感を味わわされる。どんなに頑張っても沈んでゆくばかり。もう息をするのすらおっくうだ。

 私は、昨年、どうにもならない問題をいくつか抱えていました。夏頃それらになんとか片を付けたことで、全ての気力・体力を使い果たしたのか、へなちょこな私は、秋を迎える頃にはすっかり寝たきりの生活を送っていました。

 なんてことはない、単なる鬱の症状です。

 「だれにもあいたくないの! だれともおはなししたくないの! どこにもいきたくないの!」と主張する、私の中のインナー・チャイルドの気持ちを尊重した生活を送ることにしました。

 なんてことはない、単なる引きこもりです。

 鬱で引きこもりの私は、猫の保護や里親探しの活動をされている団体のブログを見つけては、何年分も遡って読みあさる。そして、泣く。という活動に没頭するようになりました。

 世の中にはいろんな事情でお家をなくした猫さんが沢山いて、その猫さんたちにとって、外の生活がいかに過酷かということを、それらのブログで知りました。かゆい疥癬で全身が覆われた猫さん。病気で、目を開けられなくなった猫さん。脚やしっぽを失くしてしまった猫さん。たった1匹で外に取り残されて寂しくて不安で、人間を見ると、どんな人でも嬉しそうに近寄ってくる猫さん……。

 普段、感情が凍結している状態でめったに泣けないのに、猫団体さんのブログを読むと、涙はどばどばと出てきました。猫ブログを読む時は、片手にタオルが必需品でした。

 「癒し」でしょうか。

 お気に入りの猫ブログを過去ログ含めてあらかた読み尽くしたある日、とあるブログに「ボランティア説明会開催」の文字が。猫シェルターで、保護された猫さんたちのケージのお掃除などが主な職務のボランティアさん募集、とのことでした。

 「ボランティア……体調がイマイチな私にできるかしら?」と逡巡する大人の私と、「ねこー! ねこちゃんのボランティアー!! やるやるー!」と、今年初めての笑顔を見せる、我がインナー・チャイルドの間で迷いましたが、「とりあえずお話を聞くだけなら……」と、説明会に参加しました。

 そして、次の日から、2日間、飲まず食わずの寝たきり状態になりました。

 鬱で寝たきりになると、私の場合、目が覚めていても、手を伸ばして枕元の水を飲むということもできなくなります。寝返りをうつこともできません。まあ、こういう時は横になっているしかない。

 「猫シェルターでのボランティアは、きっと私には無理なんだ。あきらめよう」ちょっとしたことで寝たきりになる自分が情けなかったです。

 そんな私に「ボランティアやるべし」と指南してくださったのは、カウンセラーです。

 猫シェルターのボランティア説明会に行っただけで寝込んだのは、やっぱり私にあのトラウマがあるからだ。そう思い、ボランティア活動は諦めようとした私に、カウンセラーは、ボランティア活動をしたほうがいい、と強く奨めました。

 かかりつけのカウンセラーである臨床心理士のもとには、かれこれ7年くらい通っています。

 カウンセラーがやったほうがいいと言うことなら……と納得し、説明会に伺った保護団体さんにメールすると、面接のご案内がありました。

 久しぶりの面接です。これまで数々の面接で不採用になった記憶が走馬灯のように蘇り、震えました。果たして私のような者が面接を突破して、ボランティアとして採用してもらえるのでしょうか。

 面接当日、シェルターの猫さんを触りたい一心で、私は早めに現地に到着していました。普通のお客さんの振りをして猫シェルターに入ると、そこには当然ながら、たくさんの猫さんたちが。一気にデレデレと弛緩していく、my 仏頂面。

 私はこちらの猫さん、あちらの猫さん、足元の猫さん、ケージの上の猫さん……と、とにかく視界に入る猫、全てにちょっかいを出し、触らせてくれる猫さんは心ゆくまで、なで尽くしました。床に座って猫をなでていると、頭上では猫さんがケージからケージへ飛び移っていました。

 「ここは、天国か? 天国に迷い込んでしまったか……!?」とうっとりしていると、頭上をジャンプする猫さんが、翼を羽ばたかせる天使に見えてきました。

 シェルターの猫さんたちは、みんな優しくて、ほとんどの猫さんが私の手の匂いを嗅いでから、ぺろぺろと舐めてくれる人懐こさ。

 私がペンを使っていると、「なに? なにそれ? なになに?」とかわいい白猫さんが好奇心いっぱいで近寄ってきました。ただのペンにこんなに興味を抱いてもらって恐縮に思いながら、「ほ~ら、これは、ペンというものだよ~」とペンをゆらゆらさせました。白猫さんは、綺麗な青い目でペンをじーっと見つめながら、ペンの動きを首ごと、追っています。そうしていると、よっぽど面白いことをしているように見えたのか、他の猫さんたちも「ほう、なんですかな」「これはこれは」「ほほ~ぅ」という風に数匹寄ってきて、ペンの周りにいつの間にか猫の輪ができていました。みんな、きちんとお座りの姿勢で、じっとペンに熱い視線を送りながら、動きを首ごと追っています。

 私は、手に持っているものがただのペンなので、ますます恐縮するばかりでした。

 いつまでもそこで猫さんたちと戯れていたかったのですが、時間になってしまったので私は面接が行われる部屋に向かいました。面接では、

 「応募の動機はなんですか? 猫は飼ったことはありますか?」などとシェルターのスタッフに質問され、私は動機として猫が好きなこと、説明会に参加して代表の話に共感したこと、そして、猫は子供の頃に飼っていたが今は飼っていないこと、などを伝え、面接の結果ボランティアとして働くことを許可されました。

■大和彩/大学卒業後、メーカーなどに勤務するも、会社の倒産、契約終了、リストラなどで次々と職を失う。正社員、契約社員、派遣社員など、あらゆる就業形態で働いた経験あり。

大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』

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