
Photo by Parker Knight from Flickr
「死ぬまでセックス」「高齢セックス」などの言葉が、男性誌を中心に世の中を賑わす昨今。
高齢者の健康状況が一昔前と比べて格段に良くなったことなどを背景に、あながち「夢」ではないという風潮が出始め、世の男性の密かな希望となりつつある。メディアでは「定年後もバリバリ」「80歳でも現役」などのエピソードがたびたび紹介されているようになった。
反対に「本当にそんなことが可能なのか?」という疑問の声もある。朝日新聞系列のニュースサイト「dot.」では、宋美玄医師と岡田弘教授の対談が掲載された。そこでは「死ぬまでセックスはファンタジー」と一刀両断、無残に切り捨てられている。歯に衣着せぬ言い切りに傷ついた人も、きっといるだろう。論争は今後もますます過熱しそうな勢いである。
ところで、マスコミはなぜ「死ぬまでセックス」論争を仕掛けたのか? 高齢者の性市場を開拓する狙いでもあるのだろうか……。と、いろいろ考えてみたが、本当にどうでもいい話である。
もし男性読者を代表して言わせてもらえるのであれば、私はこう問いたい。問題は、世界が2014年を迎えた現在、男は何歳まで勃つのか。また平均勃起寿命はいつまでなのか。最終的に、勃起しなくなると男は何を失うのか、と!
……さて、すこし冷静さを取り戻しつつ、韓国の現状を見たい。
現在、韓国でED(勃起不全)の患者は約200万人いると推測されている。2005年の段階では120万人、2012年には170万人という統計もあり、10年スパンで見ると年々増加傾向にあるようだ。
ED患者増加の要因のひとつには、高齢化が挙げられている。充分にあり得る話だ。今や韓国は日本に追いつけ追い越せとばかりに、高齢化社会へと突き進んでいる。毎年、EDの患者関連の数字が急激に上がっているとしても不思議ではない。
一方で近年、韓国の泌尿器科業界で問題視されているのは、20-30代のEDが増えているという統計だ。その増加の推移は40代男性にも負けず劣らずのようで、専門医たちがあっと驚くような状況になりつつあるらしい。しかも、20-30代の男性は自分がEDであることに無自覚なため、治療を受けないケースが多いらしい。その裾野は、医師たちが把握しているよりもよりさらに深刻だと憂慮されている。
20-30代の韓国人男性のED症状の理由は、心理的ストレスによるところが多いらしい。過度な競争社会で生きる重圧や、先行きの見えない未来への不安などは、若い韓国人男性のおちんちんを直撃している。
男としての自信に関わる問題
もしや、と思い日本の現状も調べて見ると、出てくる出てくる。日本でも若年性EDや、緊張型ED、バーチャルEDなど、若い世代のEDについて、ここ数年注目が集まりはじめているようだ。医学の世界では「EDの若年化」と呼ばれているそうだが、あまり喜べない現象。日韓の若い男性にとって生きづらい時代だということを、証明する統計結果となった。
それでは、勃起しなくなった韓国人男性にはどのような変化が起こるのか。
韓国の「DATANEWS」が報じたところによると、韓国リリー製薬会社のアンケートに回答したED患者301人の内、約80%近くが「パートナーを満足させられない」「自信感を喪失した」と答えているそう。また、69.4%が「性行為とは関係ない日常生活にも影響を及ぼしている」とも回答しているという。やはり男にとって、勃起=生きている証なのだろうか。自分に対する自信感では世界トップクラスにある韓国男子でさえ、EDの前には悩みは大きいようだ。
ただ一方で、韓国のネット掲示板にこんな書き込みもある。
「32歳のサラリーマンです。好きな人ができました。その彼女とエッチしようとしたのですが、全く勃起しませんでした……。個人的に2年ぶりだったせいかとも思ったのですが、彼女の方は『私が女に見えないのね』『魅力がないの?』と、悲しんでいます。本当にそんなんじゃないんですが……。
あっ、ちなみに僕はSIZEも小さいし、早漏で、包茎なんです。同時にどうにかできませんでしょうか? 早く治して、彼女と愛を分かち合いたいです!」
ED治療のついでに、おちんちんの悩みをぜ〜んぶ解決してしまおうというバイタリティ! はたして、さきほどのアンケート結果はなんだったのだろうか。おそらく、自信を喪失するというのも、「韓国人なりの自信の喪失」なのかもしれない。
韓国ではすでに女性の性器整形が流行しているが、EDが増えるにつれ、おちんちんのお悩みを全て解決してしまおうと男性の性器整形の需要が増えることもありえる。そして、EDにもめげず、自信感をさらに上昇させていくのではないだろうか。いずれにせよ、EDと自信感、そして韓国人男性の関係性は、見ていて非常に興味深いテーマだ。
■河 鐘基/エンターテイメントから政治まで、韓国の社会問題を広範囲に取材。雑誌やウェブ媒体を中心にライター活動を展開中。K-POPも好きだがAKB48の方が好きという、韓流ライターにあるまじき趣味を持つ。さらに正直に言えば、ローラのほうが好き。