「女の話は飛び飛び」と言うけれど……
話は少し飛びますが、昔、あるカップルから別々に恋バナを聞くということがありました。その二人は少し前に大ゲンカをしたようで、その様子をそれぞれの視点で語ってもらいました。彼女のほうは、ケンカの理由はもちろん、場所や日時、彼氏のリアクションや自分がそこで思ったこと、さらには自分の着ていた服や彼氏の鞄の柄まで、とにかく事細かに説明してくれました。
それに対して彼氏が語ってくれたのは、これホントかなりそのまま収録しますが、「いや、何か彼女が怒ってて、ちょっとヤベえなって思って、とりあえず謝ったら、一応ダイジョブになりました」ということでした。我々はこれにかなり衝撃を受けました。かといって彼氏を笑うこともできません。なぜなら「自分自身も、もしかしたらこんな感じかもしれない……」と内省させられたからです。
見えてる現実がまったく違うのではないかと思うくらい、描写の細かさが違います。データ量に換算したら、その差はテラバイトどころの騒ぎではありません。おそらく彼女のほうは、普段からいろんな感情や感覚をその都度言語に置き換えて捉えているのに対し、彼氏のほうは悲しいくらいぼけ〜〜〜〜〜〜〜っと生きているため、自他の感情に死ぬほど鈍感なのだと思います。言語化ゼロ。その差は歴然です。
はあちゅうさんと永子さんが「王子様願望」について語ったくだりでは、「心理学」や「スクールカースト」、「過去のトラウマ」から「主語の使い分け」まで、キーワードをどんどん拡散させながら話が進んでいきます。
「女の会話は飛び飛びだ」みたいなことがよく言われますが、あれって実は「思いついたまま適当に話してる」って意味ではなく、一つ一つの話はそれぞれつながっていて、それを連鎖させていきながら会話を進めているということなのではないか。そうやってシナプスを連結させるようにして話題をつないでいくからこそ、記憶も強化されるのだろうと感じました。現実を捉える解像度も違えば、記憶を再強化していくプロセスも違う……。言語化の差異に端を発した男女の隔たりは、想像以上に大きいものかもしれません。
ケンカになっても構わない、という感じだった(ように見えた)永子さんも、次第にはあちゅうさんの考え方や矛盾を理解していき、最後は二人でLINEを交換するまでの仲になっていました。ほとんど真逆と言っていいほどの価値観を持った二人が、真剣に語り合う中で共通点や相違点を見出し、それを認め合ったり分かち合ったりすることで仲を深めていく……。1時間半程度の対談ではありましたが、私はそこに、自己の言語化のプロたちによるさわやかなエキシビションマッチを見たような気がします。
我々男も自己の言語化が急務である……。そんなことを感じた次第であります。とにかく二人がケンカしないでよかった\(^o^)/
■清田代表/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。Twitterは コチラ。