彼の意識は男性のままだから、女性の肉体に興奮しているのです。でも、仮に私が女性の意識を持ったまま男性になったとしても、男の肉体そのものには興奮しないし、興味も薄いだろうなぁと思うのです。彼にとって女性器が神秘的だったほどには、私にとって男性のチ○コはそれほど謎めいた存在ではありません。少ないながら男性の肉体を見てムラッと来た経験はありますが、「この肉体とセックスしたい」というのとは別なんです。より正確にいうと、「性欲は感じるけど性交欲ではない」。魅力的な肉体がそこにある……というだけでセックスまでしたくなる女性というのは、そう多くないのではないでしょうか。
男だった時には見えなかった〈男〉という性の裏側を見た主人公は、〈女性〉でいることに傾いていきます。女性であることは生きづらいけど、生きづらい原因を作っている男性ではいたくない。じゃあ私が男になったら、そんな〈男性〉に染まることをやっぱり嫌悪するんだろうか? もしかしたら、そっちがラクで流れてしまうのでは……。思った瞬間に怖気立ちました。どこかのオヤジ議員たちのように無神経なヤジで女性を貶めたりするほうが、貶められる側より確かにラクです。でも、それはイヤだ。反射的にそう思ったのです。そんなみっともない生き物にはなりたくないな、と。
みっともなくない男性になるなら……うーん、でもやっぱり私は〈女性〉がいいな。そんなことを考えさせられる映画でした。『ボディ・トラブル』はR15映画ですが、まだ具体的な上映予定は決まっていないとのこと……。ちなみにR18指定、つまり成人映画館でかけられるバージョンに編集したものもあり、これはタイトルが『僕のオッパイが発情した理由(わけ)』! なんとも即物的です(笑)。どちらのバージョンでも機会があったらカップルで、または男友達と観に行ってみてください。反応次第で、その男性のジェンダー観があぶりだされるような、リトマス試験紙的映画としても鑑賞できますから。
■桃子/オトナのオモチャ約150種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。ブログ、twitter
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