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「フェミ」とは女が男を怒る思想ではないですよ

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生殖技術の発展による新たな搾取

 最近の問題として、日本人の事業家がタイの代理出産ビジネスを利用して多くの子供を設けたことや、オーストラリア人夫婦とタイの代理母の間に起こったトラブルなどがニュースの話題になっておりますが、本書では生殖技術の発展によって生じる新たな問題についても取り上げられています。

 体外受精などの不妊治療の発達は「子供が欲しいけど、持てなかった夫婦」にとって、手放しで喜ばれるものとして扱われているように思います。しかし本書では、こうした技術の発展が、母胎を「単なる胎児を育てる器」と見なしたり(要するに生殖技術によって女性の身体が『機械化』されてしまう)、あるいは、貧困国の女性に出産リスクを負わせるという搾取を生んだりする問題を生じさせていると指摘しています。新書サイズでありがら、最新のトピックにも対応している射程の広さは、本書のありがたいところです。

 本書は「フェミニスト = 『女性の社会進出!』、『男女差別をなくせ!』と主張する人」という表面的で古めかしい理解ではなく、「女性の身体の所有問題」という新しいフェミニズムへの理解と、フェミニストの主張を「聞ける人」が増えるきっかけを作ることでしょう。なにしろ、彼女たちが闘ってきたのは、男性にとっても非フェミニスト女性にとっても、もっとも身近にある戦場なわけです。だからこそ、無視してはいけない問題だと思うんですよ。

■カエターノ・武野・コインブラ /80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra