ゴシップ

デヴィ夫人とは何者か、ご存知ない若者へ~知られざる波乱に満ちた半生を読み解く

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一年間の輝かしい青春

 女優か画家になりたいというひそかな夢を抱いた中学時代を経て、七保子は高校へは進学せず15歳で就職の道を選びました。生命保険会社に入社して事務仕事を行いながら、夜間定時制高校に通いはじめます。「本当はもっと学びたい、けれど、経済的な事情で仕方なく……」という気持ちではなく、「さあ、いよいよわが手で人生を開拓するのだ」と野心に燃えていた七保子。彼女は精力的に動き、平日昼間は生保の事務、定時制高校の夏休みは夜に喫茶店でアルバイトもし、一方で芸能プロダクションに所属して女優業も開始しました。そのうえ、友人たちと銀座の美少年バーや赤坂のナイトクラブへ行き、「青春をエンジョイ」しまくっていたというから果てしない体力です。「三日間くらい寝ずにいたってビクともしない、はがねのような若さ」と本人が述懐する通り、かなりタフな青春時代ですね。このころに初めての恋人と交際し、山中湖の湖畔にあって友人の別荘で16歳の時に初夜を迎えたことまできっちり記されています。

 貧しいながらも希望に満ちた10代を送っていた七保子ですが、就職二年目の年末に父が突然倒れてそのまま亡くなり、逆風にさらされる脚の悪い母と病弱な2歳下の弟を養うのは自分だ、と覚悟を決めた彼女は、一流ナイトクラブで働くホステスたちが桁違いの収入を得ているのを目にし、自らも夜の仕事をスタートさせることになるのです。

 生保会社では定期昇給があったものの、母と中学生の弟を養える給与ではなかったといいます。女優への憧れも抱き続けてはいましたが、パトロンやコネのない自分は主演クラスの役者になることが難しいと断念。一日も早く、なんとかしなければならないと追い詰められた彼女は、銀座にあった「紅馬車」という高級ナイトクラブで、16歳の年齢を18歳と偽って週に二日のアルバイトを始めます。これが彼女にとって、大きな転機となりました。

 ソフトドリンクを飲み、お客の会話に相槌を打ち、ダンスをするだけの「ヘルプ・ホステス」としての業務で、高額の報酬を得ることになった七保子。当初はこれを一時的な生活手段としてのアルバイトだと考えており、いずれは恋人と結婚し彼の妻となるのだと決めていましたが、ある日、その彼が何も言わずに失踪。生保会社での事務職員・夜学の高校生・ホステスという三つの顔を使い分ける日々をやめ、水商売一本に絞る決意を固めるのです――。

 この時点で、デヴィ夫人は弱冠16歳。その後、一体どのような経験を経て、彼女が現在のポジションに至ったのか? それはまた次のお話です。
(つづく)

(読書&レビュー担当:ヒポポ照子)

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