
(C)柴田英里
指原莉乃の新書『逆転力~ピンチを待て~』(講談社)を読んだ。
「切り替えて考える」ことや「同じ土俵で戦わない」ことなど、興味深く頭が良い人だと関心する内容もあったものの、感想を大雑把に言えば、「コミュ力を磨き、自分の気持ちはねじ伏せたフリをして、でも上下関係は大切に、おじさんの太鼓持ちをしておけば生きやすいよ!」と取れてしまう主張の本であった。
とりわけ、「おとなしい美人には意味がないって言いましたけど、親しみやすさのないブスって最悪だと思う」(『逆転力』p63)という一文には、悲しく気味の悪いものを感じた。
「美少女過多のアイドル界では個性や親しみやすさが魅力になる」という意味ならわからなくもないが、彼女(あるいはゴーストライターの主張なのか?)は思考が悪い意味でオッサンというか、あまりにもマッチョな男性ホモソーシャルを内面化しすぎである。
私は、「ブスと自虐することがコミュニケーションを円滑にし、お互いの利益になる世の中」よりも、「コミュ力も愛想もなく、おじさんの太鼓持ちをすることもしないブスが、蔑まれることなく幸せに暮らせる世の中」の方がずっと良いし、それは当たり前の基本的人権であるはずだと考えている。
「親しみやすさのないブスは最悪」、その言霊の呪いが、現在を含め歴史上、どれほど支離滅裂に女性たちを攻撃してきたかは計り知れない。