連載

私はいかにしてビッチになったか~蜜柑の恋 地元編

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 それまでの私は、厳しい母親への反発心と、学校の同級生に貼られた「真面目」のレッテルなどのストレスを発散するように、親が寝静まった頃を見はからって家を抜け出し、朝方まで外にいることもたまにあった。けれど、地元は政令都市とはいえ東京の繁華街ほど都会的ではなかったし、アキが経営するような騒がしくギラギラとした店に出入りすることはなかった。しかし、その日からアキの店へ頻繁に通うようになった。アキは本当に私の顔がタイプだったのか、私を店で自由に無料で遊ばせてくれて、お酒も無料で飲み放題だった。そこで過ごす時間は、親や同級生が思い描く優等生キャラの自分とはかけ離れたもので、私に優越感を与えてくれた。

 アキの店へ行くのではなく、彼と初めて二人きりで会うことになった夜は、雨が激しく肌寒かった。出会ってからそんなに日が経っていない。季節はまだ春だった。

 またもや親が寝静まった深夜、家をそっと抜け出して、近所に停められた彼の車へと走った。あんなに緊張していた夜はない。あのころのウブな心はどこへ行ったのだろう……と、今になっては笑ってしまう。

 その夜は二人で深夜営業のファミレスへ行って食事をし、それからアキの家へ行き、朝まで他愛のない話をした。この夜、体の関係は持っていない。それから毎日のように、私たちはメールや電話のやりとりを続けて、なんでもない日常を報告し合った。

 アキは私のことを好きだと言った。年齢を詐称していることへの罪悪感が、ようやく生まれた。

 高校の入学式に出席した日、「――本当は今日から高校生になった、ごめんなさい」と、嫌われることを覚悟してメールを送信した。アキの顔を見て話す勇気はなかった。するとすぐに電話がかかってきた。アキは声を荒げて言った。

「驚いた。今さら遅い。もう好きになってる」

 次の日、私を迎えにきたアキは「会いたかった」と私を抱きしめた。ドラマのラブストーリーの台本のような陳腐な台詞に、私はまんまと虜になった。大人の男から対等に扱ってもらえたのは初めてであった。
(つづく)

asumodeusu

 

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アスモデウス蜜柑

好奇心旺盛な自他共に認める色欲の女帝。長年高級クラブに在籍し、様々な人脈を得る。飲み会を頻繁に企画し、様々な男女の架け橋になり人間観察をするのが趣味。そのため老若男女問わず恋愛相談を受けることが多い。趣味は映画鑑賞で週に3本は映画を見る。