連載

『ときメモ』が色濃く反映する日本人の恋愛倫理観

【この記事のキーワード】

男は従順な女を、女はエリート男子を求める

 このゲームは、プレイヤーが3年間の高校生活を送り、卒業式に異性から告白されることを目指すものだ。そして、プレイヤーの卒業後の進路が、各種エンディングに関わる重要な要素になっている。もちろん攻略対象のキャラにも『卒業後の進路』が用意されているのだが(ときメモ2、3はランダム要素が強く言及できないが、ときメモ1、4、ときメモGS1、2、3は攻略対象の進路は一部のキャラを除き固定)、この進路状況と、東大やリクルートが過去に実施した高校生進路調査資料を見比べながら考えていこうと思う。

 1994年に最初に発売された『ときメモ1』では、攻略対象の女性キャラの進路として、進学、就職はおよそ半々。それに対して2009年発売の『ときメモ4』では就職組が6分の1程度に減少し、進学(専門・短大含む)がほとんどの進路になっている。この2作は同じ学校であるという設定なので、およそ15年で校風が進学校の色味を増した。社会の流れを反映しているとも言える。

 『ときメモ1』では大学進学者の大学レベルは一流大学2人、二流大学が2人。それに対して『ときメモ4』では一流大学1人、二流大学2人、三流大学1人、短大・専門大5人となっており、とりわけ高校自体の偏差値レベルは向上していなさそうなので、単純に現実社会の変化を反映しているという仮説が成り立つだろう。

 進路のレベルや割合から見て、おそらくきらめき高校は中堅の進学校であるということが伺える。

 もう一つ重要なのは、メインヒロインの質の違いだ。

 1992年にバブルははじけたが、バブルの熱がまだまだ冷めやらぬその二年後、小室ファミリーの女性シンガーたちやジュリアナ東京で踊るボディコン女性たちが社会を席巻していた1994年に発売された第一作のメインヒロイン・藤崎詩織は、高嶺の花・才色兼備・難攻不落の伝説のラスボス的な女王タイプ、攻略することが「藤崎詩織を倒す」と称される程で、進路は一流大学だった。

 対して、男女共同参画社会基本法が制定されたことにより、日本でフェミニズムバックラッシュが顕著になり始めた1999年に発売された第2作以降、最新の『ときメモ4』までのメインヒロインは、親しみやすく・御しやすい、真面目だがとりわけ成績が良いわけでもない。放っておいても主人公を好きになってくれるタイプのキャラクターに変更された。『4』のメインヒロイン、星川真希の進路が看護の専門学校であることも象徴的である(リクルート実施の高校生の男女別の進路希望調査2013年版では、女子の将来の夢第一位は看護関係、二位は保育士、ちなみにこの2つはいずれも男子では10位以下だ)。

 一方で女性向けとして、2002年に発売された『GS1』、2006年発売の『GS2』、2010年発売の『GS3』(1と3は同校という設定)は、男性向けの『ときメモ』シリーズに比べ、シリーズ通してキャラクターの圧倒的な高学歴性が打ち出されている。

 例えば、『GS1』は攻略対象男性キャラ10人中、4人が一流大学に進学、2人は留学、2人が元より教職員(全年齢版ゲームで担任と理事長が普通に攻略対象って、そっちの方がハーレムや同性愛よりよっぽど倫理・社会的に大問題じゃねーか! と思うのは私だけであろうか)、残りの2人はフリーターと後輩(ただし前者のフリーターには起業を視野に入れての社会勉強、だという)。つまり、教職員2人を除いて、彼らは親の年収も高いエリート集団である(2009年東大調べの親の年収と進学に関する調査参照)と言えるのではないか。

1 2 3

柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」