連載

『ときメモ』が色濃く反映する日本人の恋愛倫理観

【この記事のキーワード】

 ちなみに、『GS3』ではトップレベルの進学校並の進学率に変化はないが、『ときメモ』『GS』シリーズ初のフリーター0人というのがなんとも印象的であった(2010年リクルート調査の高校生の就きたくない仕事男女ともにナンバー1はフリーター)。

 そしてもう一つ、『GS』シリーズと『ときメモ』シリーズとの決定的な差異は、「異性の教師を恋愛対象とするか否か」。『GS』シリーズは3作品全てにおいて、攻略対象の男性に担任教師が含まれている(前述の通り、1に至っては学園理事長までが攻略対象というセクハラ監査委員会も仰天の内容)。他方、『ときメモ』シリーズでは1~4のみならず、オンライン版や実写版などすべてにおいて女教師を攻略するというルートはない。男性プレイヤーが女教師を攻略する、というシナリオは一度も登場しないのである。

(これに関しては『ときメモ2』において麻生華澄という1、2年時は教育実習生、3年次は赴任1年目の担任となるキャラクターがいるという指摘を受けた。そこは私の認識不足であり、謝罪と「『ときメモ2』において一度だけ教育実習生兼新米教師を攻略するルートがある」と訂正させていただきたい。しかしながら、麻生華澄は主人公の幼なじみのお姉さんという側面が強く、教育実習生・新任教師としてよりも先に幼なじみのお姉さんであったという事実は揺るがないので、単純な教師と生徒という関係性とは言い切れないだろう。さらに、『GSシリーズ』においては頻出する「教師との恋愛」が、『ときメモシリーズ』においては1度しか登場しない。という非対称性があることこそが重要であると思う)

 これが、おそらく今現在も根強く残る、最もポピュラーな日本人の恋愛倫理観なのであろう。

「1対1の強制異性愛」
「年上の男性(教える者)と年下の女性(教えられる者)」
「女は学歴よりも“女らしさ”」
「男は高学歴高収入」

 それが、正しい恋愛のかたち。全年齢が遊べる恋愛シミュレーションゲームで描かれる「正しい恋愛のかたち」こそが、実は非常に保守的なジェンダー感から生じる差別的な価値観であるのだ。日本でもっとも広く知られているであろう恋愛シミュレーションゲームシリーズは、旧時代的な『恋愛神話』をなぞらせ、保守思想を植え付ける作品だったということをあらためて認識する次第である。

※事実誤認箇所があったため、一部修正いたしました。

■  柴田英里(しばた・えり)/ 現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。Twitterアカウント@erishibata

backno.

1 2 3

柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」