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失楽園は、まぐろ女の教科書。なおはんの「少々、無頼な女」物語

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 無頼という言葉には、無職、ごろつきなどの意味もあるが、なおはんの場合は、枠を打ち破るという意味が最も強いと思う。『おしゃれカンケイ』にゲストで出たときも、前代未聞の観客が全員男性(この番組は、スポンサーの意向で、普段は観客が女性限定)。話題沸騰中の『昼顔』の大先輩格不倫ドラマ「失楽園」出演時、「子宮が呼吸できない気がする」という理由で、前張りを取って撮影。かつて自分のことを痛烈に批判した林真理子氏と、今は仲良し。足を縫うほどの大けがを負っても、手荷物のワインが無事だったことにひと安堵。ワインと犬と葉巻をこよなく愛し、フラメンコをも踊る。『愛のエプロン』では、まさかの、料理高評価。

 こうなると、心身に叩き込まれた淳一イズムなのか、無頼派なのかわからなくなってきたが、『新極道の妻たち 惚れたら地獄』で見せたなおはんの裸は、可愛イヤらしい。小ぶりながら釣り鐘型の美乳と華奢な骨組み。その男好きする体で持てるだけの力を振り絞って体当たりした(であろう)失楽園のなおはんの背筋の動きを、男から「まぐろ」呼ばわりされて傷ついたことのある女子は、倣ってみたらいいと思う。倣う内に、芯から自信が満ち溢れていく女子もいるはずだ。50代になって、なお『チャイ・コイ』で見せた奇跡のヌード然り。マノロ・ブラニクがあんなに似合うのに、なおはんに対する女の目は、どこか厳しい。靴が好きな大抵の女はマノロ・ブラニクLOVEなのに、なおはんには賛否両論だ。何かの集まり、例えば異業種交流会でもいい。その会に、料理上手で名誉ソムリエワインの騎士号を持つなおはんが、マノロを履いて現れるとする。さて、♪~あなたな~ら、どうする~♪。何かの会で、トマトすき焼きを作るなおはんを、横にいる彼氏がうっとりと見ている。ちょっと少年っぽい笑顔でワインを飲みながら、慣れた手つきで料理をするなおはんの足首は折れそうに細く、テレビで見るより、ずっと気さくで気配り上手。女としては、上玉の骨組みなのに、葉巻をくゆらし、ワインをがぶ飲みする。どこか無頼風。週刊誌で悪いことばかり書かれていたとしても、間近で見るなおはんはきっといい女だろう。なおはんは、多分、男に不自由したことなどない。だけど、ある日突然、結婚を決めた。そして確実に今、お互いの病気を通して夫婦愛を育もうとしている。実にまとも。だから無頼派ではなく、少々、無頼派。

 無頼派と言えば、晩年のインタビューで小説家の青山光二は、太宰治と織田作之助を純然たる無頼派と言い、長寿であった檀一雄のことは純然たる無頼派ではないと答えていた。今年、大変な手術をしたなおはん。少々、無頼のなおはんは、純無頼ではないので、うんと長く生きるべきだ。自由に、これからも少々、無頼に! そして、100歳になっても、なおマノロ・ブラニクの似合う美しい婆さんになってください。

■阿久真子/脚本家。2013年「八月の青」で、SOD大賞脚本家賞受賞。他に「Black coffee」「よしもと商店街」など。好きな漢は土方歳三。休日の殆どを新撰組関連に費やしている。

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阿久真子

脚本家。2013年「八月の青」で、SOD大賞脚本家賞受賞。他に「Black coffee」「よしもと商店街」など。好きな漢は土方歳三。休日の殆どを新撰組関連に費やしている。