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妊婦ヌードやママブログが撒き散らす「母性イデオロギー」

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 現在のアメリカセレブたちのマタニティ・ヌード、マタニティ・フォトは、「身体美的判断の攪乱機能」よりも、「妊娠という特別な瞬間を残しておきたい」「女性としてのひとつの幸せの絶頂を記録したい」「自分の体の中に生命を宿す体験をポジティブに受け止めたい」という認識が強く、「マタニティ・ビューティーは芸術である」という風潮すらある(芸術であればエロスではないという意味ではない、エロスを孕む芸術も当然にあるが、妊婦の裸=芸術と視線の単一化が起きることにもまた問題があることも事実だ)ようだ。

 日本の芸能界でもhitomiをはじめ、神田うの、リア・ディゾン、MINMI、小雪、スザンヌ、山田花子、鈴木紗理奈、熊田陽子、中田彩など数え上げればきりがないほど多くの女性芸能人たちがマタニティ・ヌードフォトを披露しているが、彼女たちの芸能活動(とりわけブログが顕著だ)をみると、アメリカセレブたちよりもいっそう「母性の賛美」が強いように思う。母性を賛美し、「母親」を聖母としてことさらに美化することが直接的にタレント好感度につながることは自明であり彼女たちは自覚的にそういった活動を行っているのだろうが、受け取り手もその「聖母」イデオロギーに無自覚であってはならない。

 歴史的にみても「母としてのフェミニズム」は成功しやすい(むしろ、フェミニズム領域で一番社会に受け入れられたのは「母としてのフェミニズム」であるといっても過言ではない)。だが、そもそもフェミニズムは「女性には母にならない道もある」ということからはじまった。ここ20年での少子化、出産の高齢化、生殖医療の進歩などの問題などによって忘れられがちではあるが、「子供を産まない女の生き方」を蔑ろにしてはいけない。「女性を妊娠させ出産に導かずに一生を終える男の生き方」が非難され、「男は必ず父になる道を選ぶのが正しい人生だ」というイデオロギーが蔓延したらと考えれば、多くの人は違和感を覚えるのではないだろうか。その違和感を、女性たちは常に抱えていると言える。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」