怪しい整体に行ってみた
「オステオパシー」という言葉をご存知でしょうか。マッサージやカイロプラクティック、整体などに詳しい方は当然のようにご存知かと思いますが、西洋式整体、とざっくり言ってしまった方が伝わるかもしれません。今回お話しするのは、私のオステオパシー体験記になります。
肩こりや腰痛にお悩みの読者も多いと思いますが、私も長時間のデスクワークにともなう肩こりと、顎関節症に悩まされてきました。とくに顎関節症がこのところ急速に悪化しており、食事で口を開くたびに、顎の関節がパキパキと音を立て(隣で食事をしている人にも聞こえるほどの音量で)、痺れに近い痛みに襲われ、仕事に集中できないこともしばしばです。
顎関節症については行きつけの歯科医も「ちょっとウチでは……」と匙を投げ、今回オステオパシーの施術を受けることとなりました。でも、この手のマッサージ・整体ってちょっと慎重になりますよね。変なところにいくと余計症状が悪化したり、12年間に渡って洗脳されバンドを解散したり、仲良し兄弟横綱の家族分裂のきっかけになったりするじゃないですか。実際、オステオパシー自体、調べてみると怪しげな情報ばっかりでてくるんですよね。たとえば様々な代替医療について紹介している有名な本『癒す力、治る力』(角川書店)では、オステオパシーのメカニズムについてこんな紹介がされています。
中枢神経系とその連合組織とはたえずリズミックな運動をくり返しており、その運動こそが人間の生命と健康にとって必須のおそらくはもっとも重要な特徴である。そのメカニズムは以下の5つの要素からなっている。
・ 頭蓋骨を構成する26個の骨を連結する接合部、つまり頭蓋骨の縫合の運動
・ 脳の両半球の膨張と収縮
・ 脳と脊髄を覆う膜組織の運動
・ 脳と脊髄を浮かべる脳脊髄液内部の流体波動
・ 頭蓋骨と連動した仙骨(尾骨)の微細な不随意運動
サザランド(※引用者注: オステオパシーを発展させた人物)はこの頭仙骨システムのリズミックな膨張と収縮は呼吸運動に似ていると考えた。
……なにを言っているのか全然わからないが、とにかくなにかスゴそうだし怪しい感じは伝わるでしょうか。あわせて「アメリカではとてもポピュラーな治療法」などの情報も余計に怪しさを演出します。
なぜ、こんな怪しげな治療を私が受けたのか、というと、近所の整体院を調べたら、オステオパシーの整体院しかなかったから、という消極的な理由でした。交通事故などの外傷であれば保険が効きますよ、とか、あん摩・マッサージ・指圧師・柔道整復師免許も持っています、とそのホームページには書いてあったので「大丈夫な整体院か」を選ぶ判断ポイントとしては重要かもしれません(もっとも、オステオパシーに直接紐づいた資格は現在の日本にはありません)。
謎しか生まれない60分
その予約制の整体院は、やや古びたアパートの一室にありました。手すりやドアなどあちこちにサビが目立つ、お世辞にもオシャレとはいえない物件です。玄関のチャイムを鳴らすと白衣を着た男性がでてきて、中に案内されました。間取りは1DK、狭いダイニングキッチンが待合室になっており、6畳間が施術室。室内にはずっとモーツァルトが流れています。アジアンなヒーリング感や、ニューエイジ感はここまで皆無。物件の古さに目をつぶれば、歯医者に近い雰囲気かもしれません。
施術前には問診票を書かされます(私の場合は、顎関節症と肩こりと書きました)。問診票を書き終えると、いよいよ施術室へ。2台のベッドが並ぶ施術室に通され、すぐに施術がはじまるかと思いきや、今悩んでいる症状のほかに、これまでの怪我、手術、入院、大きな病気、通院などの経歴をかなり事細かに聞かれました(整体の人って傷病歴をピタッと当ててくれそうですが、そういうパフォーマンスはなくすべて自己申告でした)。