連載

浮気と暴力と束縛と~蜜柑の恋 地元編

【この記事のキーワード】

(ああ、駅前だし人が多いのにこんなことしたら誰かが警察を呼ぶかもしれない、野次馬が集まってくる、どうしよう……)

 何度も電柱に頭をぶつけられながら、どこまでも私の頭は冷静だった。

 二度のバッティング以外にも、アキの家に置いていた私の衣装ケースの中にGカップの赤いブラジャーがこれ見よがしに置いてあったり、マグカップに口紅の跡が付着したまま放置されていたりと、浮気相手たちから私への分かりやすい嫌がらせもあった。私はかわいそうなくらいに男装が似合うほどの貧乳なので、Gカップのブラジャーを初めて見たときはその大きさに驚いたものだ。

 浮気を何度されても、暴力をふるわれても、私は許すほかなかった。やっとアキはマミと別れ、私がアキの「一番の女」になった。アキは「私の男」になった。手放したくない。それに、私にひどい仕打ちをしても、翌日には涙を流しながら謝る彼を見ると、情が湧くのであった。私が許すまで何時間でも待ち続けるアキの姿を見ると、あっさりと許してしまう。そんなやりとりがいつの間にかパターン化していた。

2人きりの閉ざされた世界

 高校を卒業し、私は地元で就職をした。すると、アキの束縛が始まった。それまでは女子校だったため、彼は私の浮気など心配していなかったらしいが、社会に出て男性社員の多い職場に通うことになった頃から急激に変わりだした。

 会社の飲み会などに参加することは禁止され、女子校の同窓会や女同士の集まりであってもお酒の場に出ることは絶対にNGだった。出会った頃から散々一緒にお酒を飲んできたくせに、急に「まだ未成年だろ」と言うようになった。

 本格的に同棲が始まると、締め付けはさらにきつくなった。私は2人分の弁当を作ってから会社に行く。互いの勤務先がそう遠くない距離だったので、昼の休憩時間になると待ち合わせをして一緒にランチをとる。終業後はまっすぐに家に帰り、二人で軽い夕食を作って一緒に過ごし眠る。土日休みではなかったが、休日は示し合わせて同じ日に取るのが暗黙の了解。変わり映えのしない毎日が続いた。そして、それがずっと続くであろうと思うと急に恐ろしくなった。

――次の休みに、どうしても中学時代の友達の集まりに行きたいんだけど。お酒、飲まないから。

アキ「ダメ。男来るんだろ」

――でも、小学生の時から知ってる人たちだよ。みんな彼女もいるし、友達で……

アキ「絶対ダメ。その日は一緒に出かけよう」

 女友達と会うときは「誰と何時に待ち合わせをしてどこへ行って何時までに帰るか」を報告しなければならない。男性がいないかどうかの確認のために、遊んでいる最中に電話がくる。出なければ何度も着信がくるし、写メを送ることを要求される。予定がなかなか合わない友人とはメールや電話で連絡を取り合うものの、その内容もアキに見られるようになり、少しずつアキと2人の閉じた世界と、それ以外の世界との距離を実感するようになった。最初は、自ら進んでアキ以外のすべてを遠ざけようとしていたのに――。

asumodeusu

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アスモデウス蜜柑

好奇心旺盛な自他共に認める色欲の女帝。長年高級クラブに在籍し、様々な人脈を得る。飲み会を頻繁に企画し、様々な男女の架け橋になり人間観察をするのが趣味。そのため老若男女問わず恋愛相談を受けることが多い。趣味は映画鑑賞で週に3本は映画を見る。