ポイント1「勃起」
これはクソメールのスタンダードとも言うべき要素で、原動力に「勃起」を感じさせる点が特徴です。おそらく、仕事か飲み会の帰りなのでしょう。「疲れ」と「酔い」は勃起を誘発する2大要素です。そして勃起は男から正常な判断力を奪います。
これにより、「夜遅くに」「いきなり」「2人きりで」という非常識な誘い方をしてくるのではないかと推測されます。
もちろん、これが恋人であれば、深い時間の急な来訪であっても喜ばしい出来事になるかもしれません。しかし、好きでもない相手から向けられる勃起ほど気持ち悪いものはないでしょう。
このメールを提供してくれたUさんは、「何でテメーとお風呂に入らなきゃいけないんだよ!」「“笑”じゃねーからマジで!」と非常に憤っておりました。勃起してクソメールを送っちゃう心理もわからなくはないですが……これはある意味、痴漢にも通じる卑劣な行為なのかもしれません。
ポイント2「新型コミュ障」
「コミュ障(=コミュニケーション障害)」とは、読んで字の如く、誰かとコミュニケーションすることが苦手な人を指す言葉です。人見知り、雑談が苦手、2人きりになるのが怖い……。基本的にこの言葉は、「人との距離を縮められない」ことをコミュニケーション上の“障害”として表現していたはずです。
一方、このクソメールの送り主は、会ったことは2回だけで、しかもまだ全然仲良くもない女性に対し、「言ってくれたら一緒にお風呂入りに行ったのに」「とりあえずお風呂にTV付けて」などと送っています。これは端的に言って「距離を詰めすぎ」ですよね。
単に「馴れ馴れしい」というだけの話にも思えますが、こういう内容のメールは他にも数多く散見されました。相手との関係性を見極められず、性欲に引っ張られていきなり距離を詰めすぎてしまうというのも一種のディスコミュニケーションであり、我々はこれを「新型コミュ障」と名づけました。
これに関しては、紹介しきれなかったサンプルがまだまだたくさんあるので、次回のイベントでも引き続き考察していこうと考えています。
「オナニーでは満たせない部分」にヒントあり?
ではなぜ、男たちはなぜクソメールを送ってしまうのでしょうか。勃起系クソメールを見てもわかるように、送り主たちの態度は基本的に「ヤリたいと思ったときに、なるべく時間的・金銭的コストがかからない形で相手を見つけたい」というものです。だから突然、深い時間に、相手の自宅付近で飲みに誘おうとするのでしょう。
これらは極めてわかりやすい態度のようにも思えますが、よく考えると、ちょっと不思議です。もしも原動力が性欲のみだとしたら、その最もローコストな発散方法は「オナニー」になるはずです。さっさと家に帰って、無料動画でも見ながらサクッと抜いて寝れば、時間もお金もまったくかかりません。
しかし彼らは、親しくもない女性にわざわざ連絡を取り、ワンチャンを狙っている……。これはつまり、「オナニーでは満たせない部分がある」ということを表しているのだと考えられます。
「オナニーでは満たせない部分」にこそ、男たちがクソメールを送ってしまう理由が隠されているのではないか……。最後、議論はそのような方向に進みました。これに対し、我々が出した仮説はこうです。
男たちはさみしさや切なさを抱いているのに、そういう“弱っている自分”に気づくことができない。あるいは、そういう自分を認めることができない。
本来なら「さみしいから一緒にいてくれる人が欲しい」という感情なのに、それを「ああ、セックスしてえ」という風に“誤解”してしまっている。自分自身でも「性欲」だと思い込んでいるが、実は「受け入れて欲しい」「優しくして欲しい」といった様々な欲望がその下に潜んでおり、それを満たしたいという無意識の気持ちが、「オナニー」ではなく「クソメール」という道を選ばせてしまうのではないか──。