「マリモは何故丸いのか」についてはいくつか説がありました。
「河で流されて丸くなる」だとか、
「小石の表面に藻がついて湖底を転がりながら丸くなる」だとか、
「マリモが浮いたり沈んだりしている間に光合成する表面を変えながら丸くなる」だとか。
でも謎のままでした。
健康なマリモを真っ二つに切ってみたところ、中身が何かあるわけではなく、ただただ緑の塊でした。
細い藻が1本1本複雑に絡まった球体。
「小石の表面に藻がついて丸くなる」説はこの時点で違うことがわかりました。
湖底の様子をカメラ(600倍速)で見てみると、じっとしていたマリモがユラユラ動いて回転。
おお。
それも流されることなく群れのままで回転していたのです!
マリモが集団で自転してる!
それにマリモそれぞれの場所が入れ替わってる!
積み重なったお互いの場所を入れ替わることで、それぞれが光合成できるようになってるそうな。
マリモ……これまでの説を全否定したね……
グル、グル。グルグルグル……グル。グルグルグルグルグルグル……
何故かよくわからないですがこの時点で私はニヤニヤし始めました。
6月になると風速7mの特徴的な風が湾に吹き込み、水面から湖底に向かって円を描くような水の流れが作り出され、その流れによってマリモが回転していたのです。
風が弱いと回転せず、強すぎると岸に打ち上げられてしまうそうで、場所と気候のバランスによってマリモは回転していたということがわかりました。
しかし今度は天敵が登場しました。シオグサというフニャフニャした藻です。
マリモの表面にとりついて乗っ取ろうとしている……。
シオグサで覆われたマリモの群れは、文字通り、見た目もモヤモヤとしてしまいました。
このまま覆われてしまったらマリモは光合成できないではないか!
……と。
そこへまた例の風が吹きつけてきました。
マリモ回転。
グル、グル。 グルグルグル……グル。 グルグルグルグルグルグル……
集団のまま回転するのでお互いの体を擦り合わせることになります。
あっ……モヤモヤしたシオグサがはがされて消えていく……
またゴロゴロとした緑の……緑の……マリモの群れ復活です!
しかし、凄いなと思うと同時に更にニヤニヤが止まらなくなっていました。
このおかしさをどう伝えたらよいのでしょうか?
わかりません。
わかりませんので再放送リクエストボタンを押しておきました。
更なる災難は大型の低気圧。
絶妙な風を頼って生きていたのに、絶妙どころか強風が吹き荒れ、岸辺にたくさんのマリモが打ち上げられてしまいました。
打ち上げられたマリモの多くは20cm以上の大型でした。
数日後、波にもまれてバラバラになったマリモの欠片。
……大白鳥に食べられたり、猛烈な寒さに凍りついて彼らは命を終えていきます。
南無……
あら……凍りついた湖面の下にもマリモの欠片が。
春になり、マリモの欠片は雪解け水につれられて沖合に流され……
なんと、もともといた群生地にたどり着いたのです!
打ち上げられたマリモの欠片は群生地へ戻って5~7年かけて大きくなるとな。
若菜さんが打ち上げられたマリモを目撃したのは、1995年、2002年、2007年。
この5~7年周期で起こる現象に、生物の営みのサイクルがあるんじゃないかと若菜さんは考えていたそうです。
すごい。今回の調査でその考えが正しかったことがわかったんですね……。
動物みたいに胎児や卵を産むわけでもなく、植物みたいに花を咲かせて種を作るわけでもなく、
大きくなって強風で岸に打ち上げられて欠片になって、それぞれの欠片がまた大きくなっていたんですね……。
世界でも阿寒湖だけ、それも阿寒湖のチュウルイ湾という場所だけにしか生きられないという繊細さにもかかわらず、マリモのタフな一面を見たような気がしました。
ここは本来ならば「おお、輪廻だ……!」と感動するところです。
若菜さんはマリモ観察会に地元の小学生たちをチュウルイ湾に連れ出して、
「覚えておいてな。高校生の時に必ずマリモが岸辺に打ち上げられるから。小学6年生の観察会でみたやつが大きくなったんだなあ……と思い出してください」
という話をしていらっしゃいました。
マリモの“命のリレー”について大人から子供に伝えているのです。
希望の持てるエンディング。いい話です。
しかし、私はこのマリモの生態からとんちんかんなメッセージを勝手に受け取っていました。
いいエンディングでしたが、マリモが直面している状況には変わりありません。
丸いマリモが生息できるのは世界でも阿寒湖だけ、それも阿寒湖のチュウルイ湾という場所だけ。
「こんだけ場所や環境を選り好みしても生きることができるんだ……いいなあ……」
多少周囲に嫌われていても、男性に求める条件をしっかり提示し、理想の男性を得ているという、雑誌で見かけた女の人の話を思い出しました。
その人の前世はマリモだったのかも知れません。
あっ、でもマリモは絶滅危惧種だった……。
「地球環境が危機にさらされている」という警告を発して死んでいくのは、一瞬美しいと感じてしまうけど、警告を発するために自らが滅びるなんて悔しいわ!
……何の話だよ……
(転生)(転生)(転生)(転生)ザッパーン(転生)(転生)(転生)(転生)
それでは何の関係もありませんが参りましょう~!
肌寒い時期にピッタリの「秋鮭と小松菜のグラタン」