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少年少女の「性教育」でセーフセックスを教える重要性

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『少女はセックスをどこで学ぶのか』徳間書店

『少女はセックスをどこで学ぶのか』徳間書店

 『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズ(ブックマン社)のヒットさせた医師、宋美玄先生。messyでは インタビューも掲載されていましたし、彼女の名前はもうお馴染みでしょう。私もかつて『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』のDVD版をレビューする機会があり、大きな感銘を覚えたものですが、宋先生の近刊『少女はセックスをどこで学ぶのか』(徳間書店)もまた名著です。若者のセックス事情が社会問題化していることを考えさせられました。

 小学生で性感染症、13歳で出産、中絶をくり返す女性たち……これは「不良少女の非行による自業自得」ではなく、ごく普通の女児が経験しうる問題で、事実、ごく普通の女性たちが直面しています。著者は産婦人科医として勤務するなかで、性教育の過程でセックスを生殖行為としてしか説明せずに詳細をうやむやにしたことで生じる社会の歪みを感じています。そして、少女たちにセックスを禁じるのではなく、「安全な性を伝える必要性」を考えています。

 もちろん、性を学ぶべきは少女に限りません。少年にセーフセックスを教育する必要は大いにありますし、己の性的興味・好奇心にどう対応していくかなど、教えるべきことは山ほどあります。しかし「危険な性」を知らずにいた結果、望まない妊娠や、症状の重い性感染症などのリスクを背負うのは少女たちでした。自分はセックスがしたくなくても交際相手からしたがるからしてしまう、嫌なプレイも彼氏にきらわれたくないから受け入れてしまう……といった不均衡も生じています。

 すでに成人した我々には、関係のない話と思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、少女たちのセックス事情を独自に調査したレポートや、統計データをもとにした著者による分析は、深刻なものとして受け止める必要があります。10代の女の子は、成人し社会経験を積んだ「大人」と比べれば、判断力に欠ける「子供」にすぎません。そのうえ、子供であっても生物学的には妊娠可能である大人の体をもつ人間であるという矛盾をはらみます。「まだ、子供だから大丈夫」という大人たちの楽観的な安心は思い込みに過ぎず、現実から目を背けていると言えましょう。少女たちは「頭脳は子供、体は大人」であるからこそ、危険にさらされることとなります。

 少女たちの抱える性の悩みの一部には、「彼氏の手マンが痛いけど言えない」、「産婦人科には怖くていけない」……といった、成人女性も思い当たる節がありそうなものもあります。決して「子供ならではの」悩みではないのです。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra