
エマ・ワトソン、子役から、美しきオピニオンリーダーへ。 『ウォールフラワー』
『ハリー・ポッター』シリーズをすべて未見の私でも、エマ・ワトソンといえばハーマイオニーちゃんです。シリーズ第一作の公開時は、まだ11歳だったのですね。利発な印象の美少女は、女優業と学業を両立させ、知性あふれるレディへと成長していきました。そのうえ、今年7月には国連の機関「UN Women」の親善大使に任命されたのだから立派です。「UN Women」は国連活動においてジェンダー平等と女性のエンパワーメントの推進を率先して行う組織だそうです。
去る9月20日、エマ・ワトソンが国連本部で性差別の撤廃を訴えるスピーチをして話題になりました。世界中にその模様が配信されましたが、私は英語が苦手なのでネットで公開されている訳文を読みました。女優という仕事上、性的な視線にさらされることも多かった彼女ならではの見識もあれば、ごく常識的な一女性として疑問に思ったことを掘り下げての発言もあり、その若者らしく衒(てら)いのないスピーチに私もいたく感動しました。
この日本で女性として生きていくのはしんどいことだなぁと思うことはしばしばあります。特に〈ジェンダー〉〈フェミニズム〉という言葉を意識していない人でも、男性と女性は決して平等に社会生活を送っていないという現実は身にしみているでしょう。私自身にも、年齢を重ねるほどそれを強く感じるようになってきたという実感があります。仕事や、妊娠・出産・育児という役割分担については言うまでもないことですが、道を歩いているだけでイヤな想いをするのも女性ならではですよね。最近は「男性だって生きづらいんだ!」という声もあがってきているようですが、その人たちがしばらく〈女性〉として社会生活をしてみたらどんな感想を抱くのか聞いてみたいです。
世界経済フォーラムが発表した〈ジェンダーギャップ指数〉で、日本は136カ国中105位。エマ・ワトソンが生まれたイギリスは18位、仕事をするアメリカは23位……なんだ、全然生きやすいんじゃん、と思いきや、それでもたくさんの不自由にさらされていることがスピーチから伝わってきます。それだけでなく彼女は、「現状が改善されなければ、アフリカの地方部に暮らすすべての少女たちは、2086年まで中等教育を受けられない」と世界規模でのジェンダーギャップについて訴えているのです。
思わぬ〈ヌード写真〉脅迫騒動
その凛としたスピーチに拍手が集まりこそすれ、バッシングの対象になるとは私、予想外でした。フェミニスト宣言への反発なのか、「プライベートの流出画像を流出させる」と脅迫が届いたというのです。先ごろハリウッド女優のヌード写真流出が相次ぎましたが、それらを掲載していたサイト「4chan」(日本でいうと2ちゃんみたいなところ?)にカウントダウンの時計が表示され、エマ・ワトソンの顔写真と「次はお前だ」という一文が添えられていたため、誰もが〈流出〉だと考えた。そして、それに対して数々の著名人がエマ・ワトソンを支持する声明を出した……という流れですが、実はコレ、PRだったそうです。
カウントダウンが「0」になった瞬間、4chanの閉鎖を求める新サイトに移行したそうですが、なんだか後味が悪いですね。そのPR会社の意図していたところとは別の現象が巻き起こってしまったのかもしれませんが、「女性を脅すには、ヌード写真をばらまくのが有効」ということを、あらためて世間に流布したも同然では……と感じてしまうのです。
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