そうこうしているうちに、〈私本人〉と〈記号化された自分〉が、別モノなのか同一なのか混乱することもありました。この記者さんは賢い方なので、そこをはっきり線引きされているんだなぁと感じます。週刊誌の記事が出て数日後、本人からの反論がwebサイトに掲載されました。その長文は、
「日経記者がAV女優」であることよりも「鈴木涼美がAV女優」であることのほうが余程大きな問題を孕んでいる、と私は思う。
と締めくくられていて、私はハッとさせられました。AV女優という〈客体〉にもなり、その世界での体験や見聞きしたことを論文・著書にまとめるなど〈発信〉もする女性。両方のフィールド股にかけパワフルに活動している女性だからこそ、俗っぽい記号にまみれず、個人としてすくっと立っているように見えるのでしょうか。その姿に、私は励まされます。
オジサンたちは才気ある女性の過去を暴き、彼女を丸裸にした気になっているのでしょう。記号という服をべたべた着せながら、そこにヌードを観て喜んでいる……「逆・裸の王様」のようですね。なんてマヌケなんでしょう。上記のコラムを読むかぎり、記者さんが今回の報道でダメージを受けていないわけではないこともよくわかりますし、理不尽さのなかで忸怩たる思いを抱かれていることも読み取れます。今後はどのジャンルで活躍されるのか知りませんが、こうしてメディアに出る女性じゃなくてもさまざまな記号を付加される時代。そんなものをはねのけて、〈個〉をしっかり確立させながら歩んでいってほしいなぁ、と願うばかりです。
■桃子／オトナのオモチャ約150種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します（OL桃子のオモチャ日記）』ブックマン社。ブログ、twitter
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