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恋愛スキル=コミュ力という自明の理。『社内恋愛の教科書』で磨けそうなもの

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『社内恋愛の教科書』あさ出版

『社内恋愛の教科書』あさ出版

 ふと立ち寄った書店で『社内恋愛の教科書』(あさ出版)という書名を見かけ、「これはまたスゴいタイトルの本だな……」と思わず身構えました。「どんなトンデモ恋愛テクニックが紹介されている本なのか」と内容が気になるけれども、このタイトルの本を手にしているのを会社の人に見られたら恥ずかしいなぁ……と思って、ちょっと手が出しにくいですよね。私は「しめしめ、コラムの良いネタに出会えたわい」とほくそ笑みながらレジに運んでしまったんですけれど。

 しかしですよ、読んでみたらこれがなかなかの良書だったので、別種の驚きが湧きました。著者の片瀬萩乃さんは、これまでに2万人以上の恋愛相談にのり、現在はその経験から得た知識をもとに作家活動をおこなっている方だそうです。このプロフィールからも、嗅覚が敏感な人にとっては怪しげな情報商材的なイキフンを感じ取ってしまって、信用ならぬ、と思ってしまうでしょうけれど、本書は、一般企業の事務職として10年の会社員経験をもつ著者が男性に向けて書く恋愛指南書です。

社内恋愛は「じっくり」で。

 この手の本って「スーツを着ると2割増」だとか「髭が濃いのはNG!」だとか、ファッション誌にありがちな、仮想異性目線からの語りに終始するのがお約束。これは男性ファッション誌に限らず、女性ファッション誌にも言えますけれど、仮想異性目線によって、消費を煽っているわけですね。「スーツを着ると2割増(だから、カッコ良いスーツを買え!)」、「髭が濃いのはNG!(だから、痛みに耐えて永久脱毛せよ!)」みたいな。

 でも、本書はそういう本ではないんです。職場における男女間のコミュニケーションの上手い運び方をちゃんと説明しながら、気になるあのコと仲良くなる手法を懇切丁寧に教えてくれています。そうした意味で、本書は、男性のみならず女性をも射程圏内に含んでいると言えます。「男性は◯◯という行動をしがちだけど、女性は違う。××をしがち。そこを考えながらアプローチしてね!」という指南が本書では繰り返されます。女性が本書を読む場合、男性がしがちな「◯◯」の部分が参考になるでしょう。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra