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色情狂女性がヒロインなのにコメディ!?『ニンフォマニアック』の中毒性

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悲劇なのか喜劇なのか。『ニンフォマニアック vol.1』公式HPより

 映画館へ向かう道すがら、私は「そういえば今年はぜんぜん映画デートしてないなぁ」とぼんやり考えていました。年始に彼とふたりで『ゼロ・グラビティ』を観にいって以来、とんとご無沙汰です。ちなみにこの映画で私は盛大に宇宙酔いをし、内容はあまり覚えていません。そろそろ寒くなってきたし映画デートもいいよねぇ、と思いながらも、この映画はひとりで観ようと最初から決めていました。自分がそれをどう受け止められるかわからなったからです。

ニンフォマニアック vol.1』ーー鬼才ラース・フォン・トリアー監督の最新作とあれば、それだけでもう話題をさらうのは必至。ただ……ファンの方には怒られるかもしれませんが、私個人としてはこの方の作品は絶望的な気分になってしまうことが多く、それほど好んで観たいものではありませんでした。でも今回の作品は、セックスがテーマ。しかもニンフォマニア=色情狂の女性が主人公といいます。観たい。でも、怖い。性における絶望って何なのかはよくわからないけど、とてつもなくも恐ろしいように思えます。

 そこで心の準備をすべく前情報をいろいろ集めたのですが、これが意外や意外、「ユーモア」「完全にお笑い映画」「ものすごいギャグのセンス」というフレーズが並んでいるのです。レビューでも、公式HPにある著名人からのコメントでも、すでに観た人がSNSに書き込んだものでも、「笑い」の文字をたくさん見かけました。もしかしてコメディなの? ラース・フォン・トリアーなのに? ますます混乱してきます。

 そんなわけで、私なりに覚悟を決めて観にいったのです。予想を裏切らず、陰鬱なムードのオープニング。でも話が進むと……思ったより健康的かも。そんな印象を受けました。それは、主人公ジョーの若いころを演じる女優さん、ステイシー・マーティンの魅力によるものかもしれません。すっごくスレンダーで、インパラのように美しくてしなやかな身体。小さいおっぱいも愛らしく(←実は貧乳好き)、おしりもキュッと小さくて魅力的。加えて、とんでもなく滑らかな肌! 妖精レベルのかわいいボディなんです。欲情がおさえられずヤッてヤッてヤりまくる女性というから、どんな肉感ボディの女性が演じるのかと思っていたら、なんというか、とっても清らかな裸でした。

「nymphomania」は「色情狂」と訳されます。辞書にはさらに詳しくありました。いわく、「性の異常な性欲亢進。女性の色情症。異なる相手と頻繁に性行為を繰り返す。性的満足を得ることよりも、自己のアイデンティティの確認などが目的と考えられている」……だそうです。

ストイックにヤリまくる

 とても感覚的な話ですが、「色情狂」「色狂い」というと、情緒的というか、逃れられない業のようなもの感じます。自分で自分を止められない、なんともいえない狂おしさが漂ってくる言葉です。一方で「ニンフォマニアック」というと、ストイックなイメージ。あ、横文字に弱いというのは否定しません。でも、辞書の説明にも〈アイデンティティ〉とあるし、どこかそれを見極める冷静さを残しているように見えるのです。

 実際、ジョーの行動は無軌道かと思えば、生真面目な面もあり、一晩で7~8人とセックスするために、スケジュールをきちっと組んでいます。少女時代から性への関心がズバ抜けて高く、ロストバージンこそ不本意な結果に終わりましたが、ハイティーンになるころには友人と経験人数を競い合うビッチに育っていたジョー。ただ、最初は自分の性欲のためというより、好奇心や友だちへの見栄で男を漁っていたように見えました。セックスの最中も無表情。愉しんでいるようには見えなかった彼女にとって、いつからセックスが気持ちよく、なくてはならないものになったのか……については、いまひとつ読み取れず消化不良感が残りますが、とにかくジョーはインフォマニアヘの道を着実に歩んでいきます。

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桃子

オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

@_momoco_

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