性欲に忠実で無心にセックスするジョーは、やはり清らかです。ある男性に身体を洗ってもらっているときやオーラルセックスしてもらっているときの表情は、ただただ無垢だし、別の男と後背位で交わり、ひたすら快楽をむさぼっているときの顔もまた動物的で無邪気です。母親を信頼しきって身を預けている子どものように、快感に身をあずけきっている……それでいながら、ストイックな求道者のように見える瞬間もあり、これはやはり〈色情狂〉ではなく〈ニンフォマニア〉なのだなと納得しました。
セックス抜きで人間関係を築けないジョーと、家族愛・夫婦愛・男女間の愛があるものと前提している世間とのあいだにあるズレ。そこに笑いが生まれます。また、本作は中年になったジョー(シャルロット・ゲンズブール)が自身の半生を話して聞かせる形式で進みますが、聞き手となるのは、行き倒れていた彼女を助けた初老の紳士。ふたりのあいだで交わされる会話は教養にあふれとても高尚なのですが、語られている内容は〈セックス〉……という、身も蓋もなさ。そのズレがまた笑いを誘いますが、同時に不協和音を聞かされたときのような、居心地の悪さも感じます。
そのざらざらとした気持ちがvol.02に繋がっていくんだろうなぁ、と期待しながら観たエンドロール。鑑賞前に、絶望でドン底な気分になるのではないかと危惧していたことを、私はすっかり忘れていました。いろんな違和感がクセになるエンタテインメント。この秘密めいた楽しみをひとり占めしたいので、続きもやはり、ひとりで観ようと心に決めました。
■桃子/オトナのオモチャ約150種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。ブログ、twitter
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