『クローバー』 古澤健監督
稚野鳥子による原作漫画「クローバー」(集英社)は、97年から連載がスタートし、2014年の現在でも、掲載誌やシリーズを変えて続いているという超人気作品、だそうだが、私自身は一度も読んだことはない……。しかし、その掲載誌が「ぶ~け」「クッキー」「コーラス」と聞くと、少女漫画の王道中の王道な内容なんだろうな、ということは、想像できる。
武井咲&関ジャニ大倉忠義主演で映画化されるにあたってのキャッチコピーは、「私の彼氏は超ドS」(&「おあずけだ」のセリフ付き)。確かに、少女漫画の王道ヒーローは、基本的にSで、つれない男に恋にしたおっちょこちょいの女の子がなんとか彼を振り向かせようと奮闘するのが、今も昔も読者の少女たちのハートを掴むお約束の展開(監督の古澤健は、同じく武井咲主演で人気漫画『今日、恋をはじめます』の映画化も手がけている)。
大手ホテルで働く主人公・沙耶は、幼馴染みとの悲しい過去を引きずったまま、ハタチを超えても恋に臆病な状態で、現在に至る。もちろん彼女もドジなおっちょこちょいで、仕事でミスするたび上司の「柘植さん」からひどく罵られては、悔しい思いをしてる毎日。ある日突然、柘植から交際を申し込まれ、はじめは戸惑う沙耶だったが、彼のことを個人的に知るうちに徐々に惹かれ始める。やっとまともな恋愛ができるかと思ったのも束の間、彼の転勤だとか元カレの出現だとかライバルの登場だとか、次から次へと問題が降りかかり……。
映画は前半、少女漫画のセオリーから1ミリもずれることなく、さすがにアラフォー女が見てるとこっ恥ずかしくなるような、ベタベタのテンションで進んでいく。ポップな音楽をBGMに、イケメンで仕事もできる上司との密かなオフィスラブの予感、仕事帰りにこっそりふたりでオシャレなバーに呑みに行ったりなんかしちゃったりして。そんなことをこんな美男美女にやられたら、もはや同じ人間ではない、それこそ漫画の中の出来事のように感じられ、自分とはなんの接点もない異次元の世界のようだ。日本で撮影しているのに。
がしかし、この映画のポイントは、中盤、ふたりがめでたく結ばれてからにある。というか、ふたりがめでたく初めて結ばれるホテルでの描写のエロさが、一気にこの映画を生々しいものにしている。
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