
Photo by haru__q from Flickr
ラブホテルって、やっぱりいいなぁ。と最近、私のなかで〈ラブホ再評価〉の機運が高まっています。とても個人的な事情なのですが、自宅でセックスするのがあまり好きではないのです。自宅にしろ彼の家にしろ〈生活〉が目に入ると、雑念にとらわれてしまい、集中できないことが多いのです。
そこで、予算の問題もあるので毎回というわけにはいきませんが、彼とはよくお泊まりデートをします。こじんまりしたシティホテルが多いですが、事前にネットで予約しておけば、ラブホに泊まるよりも低価格で済むことが多いので、リーズナブルに楽しんでいます。でも、たまにはラブホに行きたい! と思っちゃうんですよね~。お泊まりはしないデートだけど、一緒にいて「やっぱりしたい」となったときにさくっと休憩できるし、日本が育んだラブホテルという〈文化〉をもっともっと享受したい気分が、勝手にじわじわ盛り上がっています。
それもこれも、高校生までの間、ラブホテルに強いあこがれを抱いていたからかもしれません。地方出身の私にとって、ラブホは〈車でしか行けないところ〉でした。主に国道沿いにあるからです。岩井志麻子先生の初期のころの小説では、よくそんな光景が出てきましたね。そのうらぶれた感じを行間から拾いあげ、わかるわかる、と頷きながら読んだものでした。行ったこともないくせに(笑)。でも、その手のラブホはバブル期に建てられてそのまま残っていることが多く、外観からも、わびしさが伝わってきました。そんな雰囲気に触れたい、という好奇心もありました。
といっても、自転車で乗りつけるわけにいきません。主要駅の徒歩圏内にも実は1軒あったのですが、制服で入るのは目立ちすぎます。どこから誰に見られているかもわかりません。だからティーン時代の私にとってのラブホテルは、親に送り迎えしてもらうとき、「いつか行ってみたい」と車窓ごしに眺めるだけの場所。そして、年上の彼氏がいるクラスメイトがこっそり教えてくれる場所でした。そんな話を鼻息荒くしながら聞いていたのも、いい思い出です。
ちなみに私が上京した後、国道にほど近いわが家の周りに突然、ラブホが何軒も建ちはじめました。「おお、いつか彼氏を田舎に連れてきて、地元のラブホに行ってみたい!」と思っていたのですが、父がラブホテル建設反対運動に参加していると知り、心のなかで「悪い娘でゴメンナサイ」と謝りました。いや、別に父に内緒で行けばいいだけなんですけどね。
ラブホは非日常空間
そして東京で初めてラブホを体験したときは、いたく感動いたしました。街中にこんなにたくさんのラブホがある! お風呂、大きい! 女性向けのアメニティがたくさんある! コスチュームも売ってる! 何もかもがキラキラして見えました。そこには、こっそり読んでいた官能小説に出てくる〈回転ベッド〉も〈大きな鏡〉もありませんでした。岩井志麻子作品に出てくる退廃的な雰囲気とも無縁でした。もちろん、古いタイプのホテルも都内にはたくさん残っていますが、私のなかではそうしたホテルは、やはり〈国道〉とセットなのです。〈東京のラブホ〉のあっけらかんとした様子に胸を高鳴らせたまま、はじめての〈休憩〉は終わりました。
先日、ラブホテル業界誌の取材を受けました。経営者向けの季刊誌なのですが、この業界でも危惧されているのは〈若者のラブホ離れ〉。昨今のラブホはパーティルームを利用した〈女子会プラン〉や、エステ併設など、〈カップルがセックスする〉以外の目的もさかんに提案しているのは、みなさんもご存知のとおり。私自身が最近利用したところでも、浴室でミストサウナが楽しめたので、ふたりしてみっちり汗を流しました。セックスしている時間より長かったかも……。でも、爽快感にお互い満足してホテルを後にできました。
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