
Photo by Lawrence Murray from Flickr
【第一回:私はいかにしてビッチになったか】
【第二回:彼氏以外の場所を失って。過熱する初恋】
【第三回:浮気と暴力と束縛と】
【第四回:異常な嫉妬からくるDVで、日常が狂う】
【第五回:嘘よりも重い罪の代償~蜜柑の恋 地元編】
アキとの蜜月
私の髪を切ってからというもの、アキは私を子犬のように甘やかすようになった。
私がアキの言うことにすべて従っていれば、彼は私のために風呂を沸かし、私の身体を髪の毛から足の指まで丹念に洗い、ドライヤーで髪を乾かすことさえもした。
「蜜柑はただ、俺の傍にいればいいから」
「俺は友達も家族も要らない、蜜柑さえいればいい」
「俺は蜜柑のためだけに生きるから、蜜柑は俺だけのために生きて」
恐ろしいほどの愛情と呪縛。19歳だった私には荷が重く、愛しているのに逃げ出したい。逃げられるけど、愛してるから逃げない。
携帯をチェックされるから誰に相談することもできない。そんな日々が続いた。
借金を返済し終えたアキではあったが、持っていた店は結局潰れることになり、友人の口利きで入社した某通信会社の子会社でサラリーマンとして働くようになっていた。しかし、「返済し終えた」のは店舗経営に関する借金だけで、アキの浪費癖が激しかった頃に使ったクレジットカードのローンなどは、まだまだ残っていた。催促状が郵便受けに溜まり、私も自分の給料から家賃とアキのローンを支払うようになると、少しずつ貧しい生活が始まる。
スーパーで買った30円のもやしのみで作った炒め物と安価で量の多いポップコーン、紙パックのジュースだけで一週間を過ごしたこともあれば、真冬にガスが止まり冷水を浴びた日もある。電気が止まり明かりと暖かさに飢えた翌日、私自身の体調の変化に気付いた。生理が1カ月以上遅れていた。私の生理周期は23日と、とても短い。ガチガチに縛られ疲れ果てた生活の中、私の妊娠が発覚した。当然避妊はしていたのに、0.1%の確率に当たってしまったのか。どうしよう。どうしよう。
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