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思春期に教わる「保健体育」が、男女二元論で構成されている不思議

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(C)柴田英里

(C)柴田英里

 現行の保健体育教科書では、全ての人が男としてまたは女として異性に惹かれるかのような記述になっているが、現実には全体の3~5%、学校の1クラスに1人2人はセクシュアル・マイノリティの児童生徒がいる。

 2016年は教科書の元になる学習指導要項を改訂する10年に1度の機会が訪れる。その機会に、セクシュアル・マイノリティの子どもたちを無視しない教科書づくりを求める署名活動が現在おこなわれているが、それを見て改めて、なんで今の今まで改訂されていないのかを不思議に思った。セクシュアル・マイノリティを排除しない保健体育の教科書改訂は絶対に必要だ。

思春期になると、誰もが異性への関心が高まるように…とは限りません

 無論、問題なのは教科書だけではないことはわかっているのだが、教科書が変わらないことには、なんともならないような気もする。こんな曖昧な書き方をしているのは、私自身が思春期に恐怖を感じたものが保健体育の教科書ではなく、漫画版中学生日記というコンセプトで作られたマンガ『水色時代』や、小学館学年誌に長期連載された性教育漫画『ないしょのつぼみ』といった、やぶうち優の漫画作品だったからだ。

 確かに、私が受けた保健体育の授業でも、教科書には「思春期になると、誰もが異性への関心が高まるようになります」 という記述があったが、なんというか、「5教科以外の教科書なんてテスト前に丸暗記すればよし、内容? 知ったことか」くらいにしか考えていなかったので、はっきり言ってどうでも良かったのだ。

 だが、やぶうち優『水色時代』は、この保健体育の教科書の内容を、「だれもが経験する、自然で、当たり前で、でも特別なこと」とばかりに“リアル”に饒舌に描き、人気を博し、アニメ放映までされていた。「だれもが経験する、自然で、当たり前で、でも特別なこと」としてのヘテロノーマティビティ(異性愛を標準と捉える価値観)にちっともシンパシーを感じなかったため、「自分の頭はおかしいのではないか?」と、不安を覚えたりもした。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」