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「渋谷系」が蘇る、というけれど…そもそも死んでるんでしたっけ?

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渋谷系disと非実在渋谷系課長

 「渋谷系」をめぐっては、人材コンサルタントであり、評論や社会時評なども活発な常見陽平が「渋谷系という面倒臭い存在…そして、渋谷系上司こそ最も面倒臭い奴らである」というコラムを先日書いています。

 常見が渋谷系を嫌う理由として挙げているのは、「妙なお洒落風な感覚、ちょっと敷居の高い感じ、さらには、その人たちのウンチク語りたがりな雰囲気」「自分は渋谷系を知ってると悦に浸り、相手を見下すという面倒くさい存在」。渋谷系ファンの選民意識をdisるその文章からは、そのブームに馴染めなかったルサンチマンが伝わってきますが、かつてのヒット漫画『デトロイト・メタル・シティ』(白泉社)のなかでも散々disられた内容と重なって、もはや「渋谷系dis」が「渋谷系語り」の一部に含まれていることがわかります。とりたてて、なにか珍しいことを言っているわけではないですし。

 そこでもまた「渋谷系世代が会社で偉くなってきている」という指摘があるのですが、常見はそうした輩とうまく付き合うコツを「ひたすら話を聴いてやることだ。傾聴力が試される」とアドバイスしています。ここまで渋谷系をdisっていながら、「下の世代に自分たちの好きだったものを押し付ける」態度に関しては容認しているとはどういうことなんだ、上司だからって話を聞いてもらえると思うなよ! こっちはキャバ嬢じゃないんだよ! 私は「傾聴力を伸ばそう」ではなく、渋谷系語りも渋谷系disもどっちも「いい加減に黙ってほしい」と、声を大にして言いたいのです。

 また、渋谷系世代が課長クラスになっているのは事実だとしても、当時ですらさほど売上枚数のいかなかった“盛り上がれない楽曲”を、会社の同僚・後輩たちと行くカラオケで積極的に歌いまくるような課長は実在するのでしょうか。非渋谷系のコンプレックスが作り出した幻のようにも思えます。だって実際に「渋谷系の誰も知らない曲を課長がカラオケで歌って空気が白けちゃう」現実、ありますか? 大体、渋谷系のマイナーな曲を愛聴していたような人が課長職に就いているとして、会社の人とカラオケ行ってもさ、恥ずかしくてブギーバックしたり、ゲップでみんなにセイハローなんかできないですよ。心配しなくても酔った勢いで「Choo Choo Train」(もちろん振り付きで)とかを歌ってますし、そもそも、カラオケで白ける曲を選んでしまうような空気の読めない人は、このご時世で課長になれないのでは……。

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カエターノ・武野・コインブラ

80年代生まれ。福島県出身のライター。

@CaetanoTCoimbra