
まだ若い彼らの未来はどこにある? B.A.P韓国公式HPより
またも起きてしまいました、アイドルの謀反が! ファンの目から見たら「聖戦」になるのでしょうか。男子6人組アイドルグループ、B.A.P(ビーエイピー)が所属事務所のTSエンターテインメントを相手取り、11月26日、専属契約の解除を求める訴訟を起こしました。
その予兆は先月末からありました。11月に開催予定だった南米ツアー、そして12月の日本ツアーがいきなり中止され、グループの活動休止が発表されたのです。日本で11月に発売されるはずだったアルバムも延期未定となりました。事務所が発表したその理由は「休みなく走りつづけてきたメンバーに休息が必要だから」というもの。
これ、ざわざわしますよね? 予定されていた公演を全キャンセルしなければならないほどの休息って? せめてツアーが終わってから休んじゃダメなの? 日本ツアーのチケットはすでに発売されており、釈然としない雰囲気のまま、払い戻し手続きがとられました。ここまで強行に、急ぎ足ですべてを中止するのには何かウラがあるに違いない……この時点でそう思っていた人は多かったに違いありません。あまりの多忙さに、メンバーのひとりが病んでしまった、ともウワサされました。
そこにきて、これです。あぁ、やっぱりかと。事務所とメンバーとのあいだでただならぬことが起きていたわけです。休息だけではすまない事態が。おそらく、活動休止発表前後からなされていたであろう事務所とメンバーとの話し合いが決裂したのでしょうね。
報道によれば、メンバー全員が事務所に反旗をひるがえし、契約内容のほとんどが事務所に有利になっていること、収益配分も不当であることを訴え、これはいわゆる奴隷契約だと、契約無効を主張しているのです。
まあ、よくあるアイドルの専属契約解除を求める訴状とほぼ内容は同じで、目新しいことはありません。対する事務所の公式見解も見慣れたもので、「所属アーティストへの不当な処遇は一切なかった」と、奴隷契約なんかじゃありませんよ! と主張し、このままいくと、両者は完全に並行線のまま、ガチンコ対決になりそうな気配です。
デビューからたった3年弱で…
一説によれば、2012年1月にデビューしたB.A.Pが、約3年間で10億円稼いだにもかかわらず、メンバーが受けた収益金はひとり当たり180万円だった、という記事も出たため、「年収60万円なんてひどすぎる!」などのコメントがTwitterをかけめぐりました。
ただ、この数字はよく検証してみなければいけないでしょうね。仮に10億円という数字が正しかったとしても、それが売上金額なのか、粗利なのかではだいぶ違います。「ONE SHOT」のミュージックビデオを撮ったときは、製作費に1億円を費やしたことが誇らしげに伝えられました。
デビュー前から「鳴り物入りの大型新人グループ」と華々しく謳われていたB.A.Pを育成するのに、どれだけの金額がかかったのか、採算分岐ラインはどこなのか……裁判の過程で徐々に明らかになるかもしれません。
タフな〈若き戦士〉のコンセプトを掲げ、ヌルい生き方に喝を入れる闘志全開の楽曲をヒットさせてきたB.A.Pだけに、今回の戦いにも勝利してほしいものですが、う~ん、何を「勝利」とするかは非常に難しいところですね。
ひどい事務所と決裂して独立を望むファンの声も大きいですが、勝訴して事務所を離れたところで、はたしてテレビに出ることができるのか。拾ってくれる別の事務所が見つかるのか。これまでのK-POP界の悪しき慣習にのっとるなら、そこには〈見えない壁〉が立ちはだかることでしょう。
東方神起から離れたJYJのようなイバラの道を歩むには、彼らはあまりに幼く(20歳以下が3人)、経歴もまだ浅いように思われます。芸能界で生きることを投げ打ってまでも、6人はこの聖戦に勝利したいのでしょうか? それとも、この逆境に打ち勝てるだけの巨大なバックがついている?
所属事務所のTSエンターテインメントにとっても、稼ぎ頭である彼らを失うのはあまりに痛手が大きいでしょうし、双方が早めに歩みよって、契約条件を見直すなどの折衷案をとるオトナの解決法を見出すのが、互いに得策なのではないかという気がします。〈若き戦士〉にそれは屈辱でしょうか? でも、魑魅魍魎の棲む芸能界、哀しいかな、賢く正しいだけでは生き残ることはできないのです。
本文中の写真=巨額の制作費が投じられた「ONE SHOT」MV。YouTubeより。
今週の当番=風田チヌ
すでにメンバーがふたり抜けたEXOと、B.A.Pの共通点。デビューが2012年。当初はメンバーが宇宙から来たという設定。グループの危機は「5年目のジンクス」と言われていたのは、すっかり昔のことになっちゃいましたね。